読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

怒れ!憤れ!─ステファン・エセルの遺言─

映画 ドキュメンタリー

怒れ!憤れ!─ステファン・エセルの遺言─(2012)INDIGNADOS

  • 上映時間:88分
  • 製作国:フランス
  • 初公開年月:2014/03/01
  • 監督:トニー・ガトリフ
  • 原案:ステファン・エセル(『怒れ!憤れ!』より)
  • 映画館:新宿 K's cinema
  • 評価:☆☆☆☆★。

  エセルはユダヤ系フランス人で、第二次大戦中は対ナチスレジスタンス運動に参加、ゲシュタポに捕えられ、強制収容所に送られた。戦後は外交官として活動するが、引退後には晩年に移民の権利問題やパレスチナ問題に取り組んだ。2010年、93歳のときにエセルは、« Indignez-vous » 「憤れ!」と題する32頁のパンフレットを出版し、これがヨーロッパ各国語に翻訳されベストセラーになった。このパンフレットの表題はこのあと、新自由主義による格差拡大と搾取構造への大規模な異議申立となったスペインの15M(キンセエメ)運動、アメリカの〈ウォール街を占拠せよ!〉、さらには〈アラブの春〉といった民衆運動のスローガンとなった。

 作品はスペインの15M運動の様子、これに触発されて起こったパリ、アテネのデモ、チュニジアの〈ジャスミン革命〉のきっかけとなった青果商人モハメド・ブアジジの焼身自殺を、ドキュメンタリー映像と高いイメージ喚起力を持つ映像詩的場面のコラージュによって描き出す。

 パリ、アテネマドリッドという怒れる人々が集う都市の様相は、アフリカからヨーロッパへ移民しようとする黒人少女の視点から映し出される。とりわけパリの町の様子は印象深いものだった。移民の視点から見たパリは、観光地としての華やかなパリとまったく違う様相を示している。移民にとってのヨーロッパの過酷な現実と峻厳で崇高な詩的なイメージの対比が緊張感のある映像表現を作り出している。パリの郊外の落書きだらけのビルの廃墟のなかのフラメンコの場面の美しさは、とりわけ心に残った。