アロッタファジャイナ公式ウェブサイト 舞台 「安部公房の冒険」公式サイト
演出:荒戸源次郎
- 企画・脚本:松枝佳紀
- 美術:坂本遼
- 衣裳:伊藤摩美
- 音響:筧良太
- 照明:柳田充 (Lighting Terrace LEPUS)
- ヘアメイク:清水美穂 (THE FACE MAKE OFFICE)
- 舞台監督:本郷剛史/青木規雄
- 宣伝写真:所幸則
- 宣伝美術:ナカヤマミチコ/トリプル・オー
- 制作助手:平岩信子
- 制作:山川ひろみ
- 出演:佐野史郎、縄田智子、辻しのぶ、内田明
- 劇場:初台 新国立劇場小劇場 THE PIT
- 上演時間:90分
- 評価:☆☆☆★
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安部公房の愛人であった山口果林が昨年、刊行した『安部公房とわたし』に基づく安部公房の評伝劇。
彼の創作活動を支えた妻と姿と彼の教え子であり愛人であった山口果林の三角関係のなかでの安部公房のすがたを描く。劇団「安部公房スタジオ」の主宰者、演劇人としての安部公房に焦点化されている。
舞台は左右に分割され、下手側は安倍と愛人の場である書斎、上手側は安倍と妻の場であるリビングになっている。ピエロのような狂言回しが冒頭と最後に登場し、劇の枠構造を作る。このピエロっぽい存在、とってつけたような感じがして、私は作者が期待したほどうまく機能していないように思えた。
愛人役を演じた縄田智子は大柄の美しい女優だけれど、台詞回しが不器用で表現に説得力が乏しい。どうせなら脱いで欲しかったなと、ドロドロ、体当たりでやって欲しかったなと切実に思った。演出はスタイリッシュでクールな雰囲気で、私には物足りない。前衛劇を志向した安部公房だが、その評伝劇は保守的でありきたりの形式のものになってしまった。丁寧な作業が作劇、演出の両面において行われているようには思ったけれど、こちらを混乱させ、驚かせるような仕掛も欲しかった。淡々と進む感じで(そういうのを狙っていたのだろうけれど)、ひきこまれるような勢い、リズムが乏しい。
安部公房は高校の教科書に採録されていた作家であり、私の高校時代に『方舟さくら丸』が出版されて話題になったりしたこともあり、数作は読んでいる。当時は筒井康隆の熱狂的ファンだったので、筒井康隆が褒めているものはできる限り手に取るようにしていたのだ。しかし当時の私にはその面白さがよくわからなかった。演劇人としての安部公房についてもほとんど知らない。最近は上演機会も頻繁にはないはずだ。数年前に岡田利規演出の『友達』の舞台を見たけれど、それもまったく面白いとは思わなかった。今また安部公房の作品を読み返してみると、印象は変わるだろうか。