閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

わたしたちに売るされた特別な時間の終わり

わたしたちに許された特別な時間の終わり(2013)

  • 上映時間 119分
  • 製作国 日本
  • 初公開年月 2014/08/16
  • 監督: 太田信吾
  • 製作: 太田信吾 
  • 共同プロデューサー: 土屋豊 
  • 脚本: 太田信吾 
  • 撮影: 太田信吾 
  • 編集: 太田信吾
  • 出演:増田壮太、冨永蔵人、太田信吾
  • 映画館:ポレポレ東中野
  • 評価:☆☆☆☆★

 

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 プロミュージシャンとしての成功を夢見つつ、それが果たせぬ状況に苦しみ抜き、27歳で自殺した増田壮太と彼の音楽パートナーであった冨永蔵人を追うドキュメンタリー。弱くて情けない人間が、己の弱さと情けなさに怯え、苛まれ、傷つきながら完成させた渾身の傑作だ。

 成功か挫折か、二者択一しか己に許さない視野の狭さ、潔癖さが痛々しい。自分の求める成功と現実の自分のギャップに苦しんだ挙げ句、増田壮太は死を選ぶしかなかった。映画のなかで流れる彼の曲はあまりにも繊細で、絶望的で、甘ったるくて聞くのがつらくなる。素晴らしい才能の持ち主だとは思うが、彼ぐらいの才能を持った人間はあまたいるのだ。もがきながら無残に落ちていく増田の姿をカメラは無慈悲に追いかける。しかしそのカメラは、撮影者・監督の太田信吾の弱さもまたしっかりと捉え、さらけだしている。

 壮絶で悲壮な作品だ。映画終了後、カタルシスのない澱んだ悲しみに胸が詰まる。げんなりする。