閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

悪童日記(2013)

悪童日記(2013) A NAGY FUZET LE GRAND CAHIER

  • 上映時間:111分
  • 製作国:ドイツ/ハンガリー
  • 公開情報:劇場公開(アルバトロス・フィルム)
  • 初公開年月:2014/10/03
  • 監督: ヤーノシュ・サース 
  • 原作: アゴタ・クリストフ 『悪童日記』(早川書房刊)
  • 脚本: アンドラーシュ・セケール 、ヤーノシュ・サース 
  • 撮影: クリスティアン・ベルガー 
  • 編集: シルヴィア・ルセフ 音楽: ヨハン・ヨハンソン 
  • 出演: アンドラーシュ・ジェーマント 双子、ラースロー・ジェーマント 双子、ピロシュカ・モルナール 祖母、ウルリク・トムセン 将校、ウルリッヒ・マテス 父、ジョンジュヴェール・ボグナール 母
  • 映画館:TOHOシネマズ シャンテ
  • 評価:☆☆☆☆

-----------

 原作を読んだのは20年くらい前か。ハンガリーからの亡命作家であるアゴタ・クリストフの処女小説。子供の書いた日記という設定のため、シンプルな語彙と文法で書かれたぎごちない文体が説得力を持った。

 時代は第二次世界大戦中から戦後にかけての東欧の国。明示されていないけれどクリストフの母国であるハンガリーであることは間違いないだろう。戦争が激しさを増していくなか、双子の少年は田舎町の外れに一人で暮らす祖母のもとに預けられる。この祖母は「魔女」と呼ばれ、人と交わることなくひとりでたくましく生きていた。双子の孫がやってきても、彼らに情愛を示さず、労働力としてこき使う。戦時下で大人達も自分たちが生き抜くために、狡猾なエゴイストとなっている。殺伐とした世界で生き残る強さを身につけるため、少年たちは様々な試練を自分たちに課す。彼らの父は、二人に一冊の大きなノートを託した。少年たちは日々、見聞きし、経験した出来事をそのノートに記していく。二人は本当のことだけをそのノートに記した。

 戦争がもたらす社会の退廃を少年たちの視点から冷徹に描き出す。双子の少年という設定ゆえ、映像化は困難であると考えれていた。今回の映画化ではよくあんな双生児の少年俳優を見つけ出したものだ。祖母役の俳優もイメージにぴったりだ。原作小説の雰囲気をしっかり伝える秀作だと思った。110分という長さに収めるため、ひとつひとつエピソードが蓄積される書籍版より、味わいは原作より薄くなっているように感じたが、映像がそれを補っている。