閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

不機嫌なママにメルシィ!

不機嫌なママにメルシィ!(2013)
LES GARCONS ET GUILLAUME, A TABLE!
ME, MYSELF AND MUM

  • 上映時間 87分
  • 製作国 フランス/ベルギー
  • 初公開年月 2014/09/27
  • 監督: ギヨーム・ガリエンヌ Guillaume Gallienne
  • 脚本: ギヨーム・ガリエンヌ、クロード・マチュー、ニコラ・ヴァシリエフ 
  • 撮影: グリン・スピーカート 
  • 美術: シルヴィー・オリヴィエ 
  • 衣装: オリヴィエ・ベリオ 
  • 編集: ヴァレリー・ドゥセーヌ 
  • 音楽: マリー=ジャンヌ・セレロ 
  • 出演: ギヨーム・ガリエンヌ ギヨーム/ママ、アンドレ・マルコン パパ、フランソワーズ・ファビアン 祖母
  • 映画館:新宿武蔵野館
  • 評価:☆☆☆☆

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 ギヨーム・ガリエンヌはコメディ・フランセーズ所属の人気俳優だ。数年前に銕仙会能楽堂でダリオ・フォーが書いた一人芝居『聖フランチェスコ』を演じるガリエンヌを見た。教会の大きな鐘を鳴らすときの大きな動作の美しさが印象に残っている。本作は彼の舞台作品、一人芝居がもとになっているらしい。映画のなかではガリエンヌは、母と自分自身のに二役を担当する。人物や場面を巧みにさらっと演じ分けるその演技力はやはりたいしたものだ。

 圧倒的な影響力を持っていた強烈な母親のもとで、「女の子」として成長してきた自身の性的葛藤を滑稽な調子で再現する。自己戯画の徹底ぶりが素晴らしい。マッチョな価値観になじめない、なよなよしたオカマ・キャラクターで、男の子に惹かれる。フラメンコでは女踊りを喝采されて喜ぶ。スポーツもだめだし、兵役も不合格。でも自分が同性愛者であることを認めることには違和感を持っている。ハードコアのゲイバーでナンパされ「童貞」喪失も覚悟するけれど、結局、この世界でも受け入れられることができなかった。

 彼にとっての最高の美女に出会ったことで、自分が異性愛者であることに目覚めるという結末は説得力に乏しく、白けてしまった。しかし母親への愛、母親からの愛、そして自分自身の性生活の遍歴をしっかりと見つめ、それらを大らかに語るさまは見ていて心地よい。

 原題の意味は「息子たち、それからギヨーム、ご飯よ!」。男兄弟三人にも関わらず、上の二人とギヨームが区別されていたことが示されている。英語題は「僕、僕自身そしてママ」。仏英日とそれぞれタイトルが異なるのが面白い。