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閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

カフェ・ド・フロール

カフェ・ド・フロール(2011) CAFE DE FLORE

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時代と場所、人物が異なる二つの物語が平行して語られる。

一つは1960年代のパリ。美容師ジャックリーヌは、ダウン症の息子を産んだあと、夫と別れ、シングルマザーとなった。彼女はこの息子を溺愛し、慈しむが、息子は学校に通い始めると同級生の女の子、ヴェラと相思相愛の仲になる。幼い子供の恋愛だが、その結びつきの強さはジャクリーヌと相手の両親、そして学校の先生たちを当惑させる。

もう一つは現代のモンレアル。人気DJのアントワーヌは40才。2年前に長年寄り添った妻と別れ、別の美しく、若い恋人がいる。前妻との間には二人の娘がいて、娘は別れた両親のあいだをいったりきたりしながら過ごしている。娘のうち、思春期の姉は父親とその恋人に批判的だ。前妻には恋人はいない。彼女はまだ離婚の傷から癒えておらず、苦しんでいる。彼女にとってアントワーヌはただ一人、愛した男だったのだ。

二つの物語の接点は《Café de Flore》という曲だ。アントワーヌはこの曲を聴くと前妻との愛の記憶が呼び起こされ、心にうずきを感じる。1960年代に生きるダウン症の男の子ロランのお気に入りの曲でもある。ロランはこの曲を聴く度に、自分の愛しい恋人であるヴェラを思い出す。

二つの世界の時間軸は再構成され、エピソードの各場面は時間順に提示されない。120分の作品だが、かなり後のほうになるまで、この二つのエピソードのつながりは提示されない。バラバラのジグゾーパズルのピースのような展開の混乱に当惑していると、唐突に強引なやり方でこの二つの世界が結合される。この荒唐無稽なつなげかたは、その破格の大胆さゆえに、大きな衝撃と感動を呼び起こす。

 

『カフェ・ド・フロール』というタイトルから洒落た恋愛映画を思い浮かべていた。内容は一切調べず、ケベック映画ということでこの作品を私は見に行ったのだった。恋愛映画であることは間違いない。しかしなんと悲痛で残酷でやりきれない恋愛映画か。

タイトルになっている《カフェ・ド・トロール》のほか、Pink Floydシガーロスの名曲が作品のなかで効果的に使われていた。