閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

私の少女(2014)

私の少女(2014) A GIRL AT MY DOOR

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  • 上映時間:119分
  • 製作国:韓国
  • 初公開年月:2015/05/01
  • 監督: チョン・ジュリ 
  • 製作: イ・チャンドン 
  • 脚本: チョン・ジュリ 
  • 撮影: キム・ヒョンソク 
  • 音楽: チャン・ヨンギュ 
  • 出演: ペ・ドゥナ(ヨンナム)、キム・セロン(ドヒ)、ソン・セビョク(ヨンハ)
  • 映画館:渋谷 ユーロスペース
  • 評価:☆☆☆☆

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 同性愛のスキャンダルで、ソウルから寂れた漁村の警察署長として赴任することになったエリート女性警官の役柄をペ・ドゥナが演じる。その村で母親に捨てられ、継父に虐待される少女の役柄がキム・セロン。継父は酒乱でモラルに乏しい男だが、外国人不法労働者を使って漁業を行う彼は、村の経済にとってはなくてはならない人物である。

 田舎の閉鎖的な村のどんよりとした退廃、地元と警察署の癒着と腐敗、安い賃金で使い捨てされる外国人労働者、そして救いのない児童虐待などの悲惨な状況が冷徹にリアルに描かれていて、やりきれない気分なる。

 同性愛のスキャンダルに深く傷ついた女性所長は、部下の所員や村の人々から距離をおいてひっそりと暮らすことで自分を守ろうとする。彼女は孤独を癒すために、毎晩浴びるように酒を飲む。そこにそれまで誰に救いを求めることもできず、ひたすら継父とその老母からの虐待に耐えていた娘が入り込んでいく。

 ドンドンドン、と所長が閉じこもる家の扉が激しくノックされる度に、彼女のなかに傷ついた他者たちが入り込んでこようとする。

 いかにも現実にありそうな出来事を容赦ないリアリズムで提示する。ペ・ドゥナ(ヨンナム)、キム・セロン(ドヒ)、ソン・セビョク(ヨンハ)の素晴らしい演技にひきこまれた。ヨンナムのとまどい、ドヒの願い、ヨンハの絶望、彼らはリアルであると同時に優れてアレゴリックな人物でもある。

 最後に映画のなかでは希望が提示されていてほっとする。しかし現実にはハッピーエンドにはならないで、延々と地獄が続く場合が多いに違いないと思い、気が沈んだ。