閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

駈込み女と駆出し男(2015)

kakekomi-movie.jp

上映時間:143分
製作国:日本
初公開年月:2015/05/16

監督: 原田眞人 

企画: 井上麻矢、石井美保子、田辺昌一 

製作総指揮: 大角正

プロデューサー: 榎望 、升本由喜子、住田節子
原案: 井上ひさし 『東慶時花だより』(文春文庫刊)
脚本: 原田眞人
撮影: 柴主高秀
美術: 原田哲男
衣裳: 宮本まさ江
編集: 原田遊人
音楽: 富貴晴美
照明: 牛場賢二
整音: 矢野正人
録音: 鶴巻仁
助監督: 井上昌典
出演: 大泉洋(中村信次郎)、戸田恵梨香(鉄練りのじょご)、満島ひかり(お吟)、内山理名(ゆう)、陽月華(法秀尼)、キムラ緑子(お勝)、木場勝己(利平)、神野三鈴(おゆき)、樹木希林(三代目柏屋源兵衛)、堤真一(堀切屋三郎衛門)、山崎努曲亭馬琴

映画館:ユナイテッドシネマとしまえん

評価:☆☆☆☆★

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原案となった井上ひさし 『東慶時花だより』は読んでいなかった。井上ひさしの晩年の連作小説集とのこと。

外出の予定がなかった日曜日、娘が何でもいいから映画を観に行きたいと言ってきたので、近くの映画館で上映されている作品で、時間の都合がよかったこの作品を選んだ。井上ひさし原作というのとキャストの豪華さに惹かれたのだ。

江戸時代の縁切り寺を舞台に、愛の諸相をユーモラスに、悲壮に、そして力強く描き出す。複数の恋が絡み合い、話の筋はかなり錯綜していてわかりにくいところもある。演出上の仕掛けと俳優の見事な演技に、あっさり持って行かれてしまい、その戦略にはまって、映画の世界に没入してしまった。こんな映画の見方をするのは久しぶりのことのような気がする。後半はぼろ泣きしながら見ていた。暗くて陰鬱でめそめそした話ではまったくない。むしろ生のありかたを力強く肯定するような作品だ。

時代や社会の制約のなかでもがきながら、それを乗り越えて生きていこうという人たちの健全さは感動的だ。その動きのなかにこそ、生きいていることが実感できるような気がする。

名優が揃っていて、それぞれが自分の持ち味を十全に生かした素晴らしい芝居をしている。主演の大泉洋の軽やかでひょうひょうとした雰囲気、驚異的な饒舌の心地よさは快感だ。満島ひかりは最初に姿を現したときから、圧倒的な存在感を発揮し、説得力のある表現でリアルな人物を造形する。キムラ緑子(お勝)、木場勝己(利平)、神野三鈴(おゆき)堤真一(堀切屋三郎衛門)、北村有起哉といった舞台でも活躍する俳優たちは、この映画のなかでもその技量と経験をいかした見事な芝居で、印象的な存在となっている。

濃厚で贅沢な映画。

縁切り寺の史実からこのようなロマンチックで豊かな愛の物語を作り出す作家の想像力の凄さに感歎する。原作も読んでみよう。