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閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

永い言い訳(2016)

nagai-iiwake.com

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地味だけれど、曖昧ですっきりしない終わり方がもたらすずーんとした重みが、見終わった後、徐々に増してくる。家に帰り映画のことを思い返すと、静かにゆっくり憂鬱な気分になっていく。

日常のけん怠の積み重ねのなかで、夫婦関係が気がつくとうんざりとした惰性的関係になっている。お互いを慈しみあう愛情は枯れてしまった。顔を合わせると出てくるのは嫌みやあてこすりだ。互いが互いに甘える共依存関係の持続のなかで、くすんでしまった夫婦というのは、世の中にきっと数多いに違いない。気がつくと優しい言葉をかけることがなくなっている。相手を思いやる優しい感情さえ浮かばない。

そんな夫婦関係でも、長年一緒に生活をともにした配偶者が突然いなくなってしまったときには、解放感よりも喪失感にとまどう人間のほうが多いような気がこの映画を見てした。「生きているうちに優しくしておけばよかった」という後悔はかりそめのもので、とにかくあったものが不在になることによるガランとした喪失感にうろたえてしまう。精神を侵食してくる暗い虚無感をどうにかしてやりすごしたい。

永い言い訳』は、愛しあうことを忘れてしまった夫婦をその物語の出発点にするという着想が素晴らしい。そしてパートナーを失った人間が、自分に襲いかかる喪失感と虚無感にもがきつづけることで、その死の空白を受け入れる過程を、冷徹に描いているところがすごい。