- 原作:アントン・チェーホフ
- 翻訳:神西清
- 演出:三浦基
- 美術:杉山至
- 特殊装置:石黒猛
- 衣装:堂本教子
- 音響:堂岡俊弘
- 証明:藤原康弘
- 舞台監督:大鹿展明
- 制作:田嶋結葉
- 出演;窪田史恵、小林洋平、安部聡子、河野早紀、石田大、小河原康二
- 劇場:京都 アンダースロー
- 評価:☆☆☆☆☆
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地点の本拠地、アンダースローで『かもめ』を観た。左は開演前。写真撮影可とのことだったので。開場時から安部聡子が観客に紅茶とお菓子を振舞って、ちょっとした芝居を続ける。一見リアリズム演劇っぽい空間だが、地点の演劇なので当然そうはならない。『かもめ』冒頭のトレープレフの前衛劇が主要なモチーフとして、分解され、強烈に変形され、反復的に参照されつつ、ゆっくりじわじわと『かもめ』の物語が進んでいく。解体された台詞の連なりは、首尾一貫性を喪失し、ほとんど意味不明なものになっている。この意味不明な台詞を聴き続けることは、苦痛で忍耐を強いられる。意味を繋ごうとしても、それをあざ笑うかのように、エキセントリックな芝居で論理性は分断され、引きちぎられる。
しかし後半になって断片化された言葉が再結晶化していく様は圧巻としか言いようがない。
こんな虚仮威しの前衛はやはり私の好みではないなと最初のうちは引いて見ていたのだが、その表現の多彩で奇抜なアイデアの数々、そしてその恐るべき強度に引き込まれてしまった。わけわからないのだけど、凄い。
そしてアンダースローという空間の空気が、作品をさらに凝縮されたものにしている。
強烈な演劇体験だった。
やはり演劇好きが京都に行くなら、アンダースロー訪問は欠かすことは出来ないだろう。地点のスタイルが好き嫌いに関わらず。