閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

青年団リンク ホエイ『郷愁の丘ロマントピア』

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  • 作・演出:山田百次(ホエイ|劇団野の上)
  • 出演:河村竜也(ホエイ|青年団) 長野 海(青年団) 石川彰子(青年団) 斉藤祐一(文学座) 武谷公雄 松本 亮 山田百次(ホエイ|劇団野の上)
  • 照明:黒太剛亮(黒猿)
  • 衣裳:正金 彩
  • 演出助手:楠本楓心
  • 制作:赤刎千久子
  • プロデュース・宣伝美術:河村竜也
  • 劇場:こまばアゴラ劇場
  • 評価:☆☆☆☆☆

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歴史のなかでその使命を終え消えてしまった共同体は無数にある。その町で暮らしていた人々の存在も、町の消滅とともに忘れ去られてしまい、時間の闇のなかに消えて行く。

ホエイの『郷愁の丘ロマントピア』は、私たちの今がそうした巨大な喪失の上に成り立っていることを教えてくれる作品だ。演劇的な手法で、ある町の歴史・物語を再現し、その町の記憶を召喚することで、そこで生きていた人々を厳かに鎮魂する。作品から聞こえてくる声の重なりの分厚さに圧倒され呆然とした気分になった。その声は、忘れ去られ、消え失せたものの膨大さを私たちに思い起こさせる。

背景を覆うホリゾント幕が表すダム湖のうす青色が静かに伝える、深く悲痛な思いに打ちのめされる。あの青の向こう側には、かつて多くの人たちが生活していた共同体があった。観客である私たちも俳優とともにこの人工湖の傍らに佇み、そこに沈んだ集落の日々を思う。

オーソドックスな回想の芝居だが、ホエイの演劇ならではの独自の視点と表現があた。ある土地の物語・歴史を、作り手と観客が自分たちの物語として、そして普遍性のある物語として、誠実に理解し、語り、受け止めることにはどうすべきなのかがが、しっかり考えられている作品だと思った。