閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ゆりの木団地夏祭り2018

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板橋区のゆりの木団地、夏祭り2018。これが毎年、夏の締めくくり。ベーシスト、西村直樹が率いるワイルドグリーンズのライブ。

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東京都板橋区赤塚新町にある光が丘パークタウンゆりの木通北団地の夏祭りに行ってきた。毎年8月の最終週の土日に行われる。板橋区練馬区の区境にあるゆり北団地は賃貸と分譲が混在する700戸ほどの規模の団地だ。築35年で住民の高齢化はかなり進んでいる。

この団地の夏祭りは団地の自治会の主催になる。団地ができた当初から行われているのだが、櫓を組んでの盆踊りではなく、仮設ステージでの音楽ライブが行われるのが特徴だ。12年ほど前からだと思うが、団地住民ではないが地元在住のベーシスト、西やんこと西村直樹が、彼のバンド、ワイルドグリーンズとともにこの夏祭りに出演するようになった。以後、西やんを中心に夏祭りのライブが年々進化していったのだ。f:id:camin:20180826182253j:plain

最初はワイルドグリーンズのライブだけだったのが、西やんが知り合いのミュージシャンに声をかけ、ライブが拡大していった。シャンソン歌手のソワレさんがこの夏祭りに参加するようになったのは、7−8年前からだと思う。そのあと地元のオーケストラが出演するようになり、そのオケが西やんのバンドと部分的に一緒に演奏するようになった。地元のバレエ教室の子供たちをステージにあげ、音楽に合わせて踊らせたときもあった。団地と団地周辺の老若男女たちはこの破天荒で自由なライブに熱狂し、夏祭りは年々盛り上がっていった。

このようにしてゆりの木夏祭りは、団地の夏祭りとしては異色の老若男女を巻きこんでの地域住民熱狂ライブ祭りになっていった。

昨年からは団地住民に夏祭りのためのアマチュア合唱団の結成が呼びかけられれ、オケの指揮者の池田開渡さんが合唱団を指導して、夏祭りでゆりの木スペシャルオーケストラ+西村直樹とワイルドグリーンズ+地元バンド+ゆりの木合唱団の合同演奏で、第九の演奏を夏祭りのフィナーレでやるようになった。これが実に感動的だった。夏祭りの会場は団地の二つの棟の狭間の細長い空間である。そこに押し寄せた聴衆たちの盛り上がりようと言ったら。

今年のフィナーレはこのゆりの木夏祭り第九の第二回となった。昨年より合唱団員の数は増えている。天候にも恵まれ、トリ前の西やんのワイルドグリーンズのライブのころから祭り会場は人でいっぱいになった。

野外、それも団地の建物の間の路上で、フルサイズオーケストラの演奏が行われるなんてそうそうないだろう。聴衆は地域の住民。酒が入った人も多く、はじまる前からかなり盛り上がっている。このゆりの木スペシャルオケに参加する正装の演奏者の顔もなんか嬉しそうだ。こんな環境で演奏する機会は彼らにとってもそうそうない。

オケの準備が整い、指揮者の池田開渡さんが現れると、既に彼はこの夏祭りのスターなわけで、聴衆たちは大喝采を送る。最後の第九演奏の前に、まずオケだけでエルガーの《威風堂々》、ボロディン《韃靼人の踊り》。それから地元のギタリストとトランペット奏者をソリストとして迎えて《アランフェス交響曲》の第二楽章。これはかなり大胆なアレンジが加えられたものだった。

それからワイルドグリーンズ、地元バンドのマヤン&シモベーズ、そしてゆりの木合唱団とゆりの木スペシャルオーケストラによる《ゆり北第9》が始まった。

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始まる前からその素晴らしさを予感してどきどきする。写真に写っているビニール傘は、手作りの集音マイク。野外の祭りでの演奏なので、マイクがないと音が聞こえにくいのだ。音響も地元の人間がやる。
合唱隊が登場すると会場は大いに盛り上がる。そして終演時の一体感、盛り上がりと言ったら!こんな親密な雰囲気の演奏会なんてそうそうあるものではない。本当に乳児から老人まで、様々な年齢層の住民がこのライブを心から楽しんでいるのが伝わってくる。

今年はアンコールがあった。エルガーの《威風堂々》のさびの部分がもう一度演奏される。聴衆もハミングで演奏に加わるように指揮の池田さんからうながされる。驚異的なもりあがりと高揚感のなか、祭りは終了。

ゆりの木団地夏祭り2018、フィナーレは《威風堂々》のサビをオケの演奏に合わせて聴衆も合唱。しびれるわ。最高。

私のとなりで立っていたひとが「あー、楽しかった」とつぶやいていた。

東京の端っこにある小さな団地の夏祭り、でもこの夏祭りは本当にすばらしいものだ。最高。