閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

神々の深き欲望

製作年 : 1968年
時間:174分
製作国 : 日本
配給 : 日活
キャスト(役名):三國連太郎(太根吉),河原崎長一郎 (太亀太郎),沖山秀子(太トリ子),嵐寛寿郎(太山盛),松井康子(太ウマ)
監督:今村昌平
製作:山野井正則
脚本:今村昌平,長谷部慶治
企画:今村プロダクション
撮影:栃沢正夫
音楽:黛敏郎
美術:大村武

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評価:☆☆☆☆

早稲田大学図書館AVホールでの追悼上映.174分という長尺で,映画の内容もかなり重そうだったので,こうした機会がないとこの作品を観ることはないかもしれぬと思い,大学に赴く.舞台となったくらげ島は架空の島だろう.沖縄文化圏に属する島だということは確かだが,映画で描かれる過剰な土俗性はいくつかの僻地での伝統習俗を混交させて人工的に作ったもののように思える.南洋の「未開」ユートピアの定型に沿った設定.こうした「南国ユートピア」は本土復帰以前の沖縄に対して,日本人が抱いていたイメージの一典型だったような気がする.きてれつな土俗宗教や因習,性的な自由が「お約束」として描かれるが,今村作品だけにその演出はねとねとした液体のような濃厚さで,しばしばそのユーモアは差別的な表現と紙一重なものになる.沖縄の人はあまり愉快ではないかもしれない.
暑い南国の風景が今村のフィルターによってさらに暑苦しいものになる.こうしたうっとうしさが3時間近く続くのだから,やはり観るのにはちょっとした覚悟が必要である.1980年代以降の今村作品のようなやさしい「手加減」が一切ないのだから.今日観ておいてよかった.