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ひねくれていて、根性が曲がっていて、自己中心的で、自尊心が強くて傲岸不遜、貧乏、しかもブサイクというおよそ人から愛される要素に乏しい女性が主人公(という設定だが、実際には野嵜好美はこれほどひどいブスではないと思う)。
[以下ネタバレあり]
ミュージシャンとしての成功を思い描く彼女は、近所のガキどもを集め、縦笛教室をやっている。子供たちや友人から「トラウマ」体験を聞き出してそれを彼女が持っている唯一の楽器、笛を使って即興的に作曲していくのが、彼女の存在証明となっている。
コメディ仕立ての作品ではあるが、そこで笑いものにされているのは彼女が抱え、意識せざるをえない孤独である。離婚した両親からも捨てられてしまった彼女には自己の存在を肯定してくれるような人間、社会は存在しない。「運命」の悪意あるきまぐれによって彼女が引き受けることになった冷淡な現実を生きるためには、彼女は自分自身で自分を説得し続けるしかない。これはかなりしんどい作業であるはずだ。
両親の離婚以来会っていない父親が入院する町に彼女がやってきたのは、美しいドイツ人青年への接近も目当てだっただろうが、自分を無条件で承認しうる唯一の存在である父親のことが気にかかったからに間違いないと思う。その父がほぼ昏睡状態にあり、話もできない有り様に立ち合ったとき、彼女は徹底的な絶望を味わったのだ。その後の自己破壊行為にほかならない彼女の浪費は、そのありさまのあまりのばかばかしさに大笑いしつつも、行為を示して浮かび上がる彼女の絶望感ゆえにこちらの気分を暗くする。
彼女にとって現実はどこまでも殺伐としていて残酷だ。
ただこの作品のラストは、ずいぶん屈折した表現ではあるけれども、かすかな救いを彼女に与えているように思った。