閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ヴェルディ《マクベス》

METライブビューイング
http://www.shochiku.co.jp/met/macbeth/index.html

RSC出身のエイドリアン・ノーブル演出による《マクベス》ということで期待して見に行った。ヴェルディの《マクベス》は、ヴェルディの初期オペラ作品で、上演機会は多くはない。美しい印象的な旋律のアリアやデュオをふんだんに取り入れつつも、原作のエッセンスはしっかりと伝える優れた翻案だと思った。陰惨な悲劇にもかかわらず、使われている曲は雄々しく陽性の曲調の曲が多く、この対比がもたらすイロニックなずれが効果的にドラマ進行に作用しているように思った。
演出では舞台を二十世紀後半の世界に移している。幕間にノーブルがインタビューに答えていた内容によると、権力闘争の中で国土が荒廃していくさまを現代のユーゴ紛争やアフリカ諸国の混乱の状態に重ねるというのが演出の意図だとのこと。全般に暗めの照明の舞台。五幕構成で各幕ごとにエピソードがうまく対比させられているにもかかわらず、舞台の変化は意外性に乏しく若干の単調さを感じた。アリアの部分では、旋律の心地よさも原因かもしれないが、何度か睡魔に引きずり込まれてしまった。
マクベス夫人を演じたソプラノ、マリア・グレギーナの歌声の声量の豊かさと表現力は圧巻だった。二の腕のたくましさもすばらしかったが。