- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12
- メディア: 文庫
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評価:☆☆☆☆★
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初めて読んだ絲山秋子の中編小説。図書館で暇つぶし用の本を探していてなんとなく手に取った一冊だった。ちょうど何か小説を読みたい気分だったのだ。
宝くじで3億円が当選した後、会社を辞め、敦賀の漁村でひっそりと世捨て人のように暮らす男の話だった。ふと気がつくと「ファンタジー」という出来損ないの神様みたいな存在が彼の家に居候をはじめる。「ファンタジー」は何の奇跡も起こさない。彼ととりとめのない雑談をし、時折格言めいたことをつぶやき、彼の退屈を紛らわせる存在。
敦賀にたまたま遊びに来ていた実直で有能なキャリアウーマンと男は知り合い、彼女と恋愛関係に陥る。しかし二人の間にはセックスはない。彼女は仕事の合間に敦賀に男に会いにやってくる。自由で軽やかで頼りない恋愛関係。男にはもう一人女友達がいる。かつての職場の同僚で、この女性は男に恋愛感情を抱いている。男もそれを十分に承知しているが、彼女の気持ちにこたえることはできない。このゆるやかな三角関係のおよそ20年くらいが小説で記されている。地に足の着かない浮遊感に身を任せるような、心細くもあり、心地よくもあるような、人生のありようが寓意的に描かれる。