- 上映時間:138分
- 初公開年月:2008/08/02
- 監督:阪本順治
- 原作:梁石日『闇の子供たち』(幻冬舎文庫刊)
- 出演: 江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、プラパドン・スワンバーン、プライマー・ラッチャタ、豊原功補、 佐藤浩市
- 映画館:心斎橋 シネマート心斎橋
- 評価:☆☆☆☆
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原作を数年前に読んでいたので、映画の内容はどんなものなのかはだいたいわかっていた。
タイでの少年少女売春とそうした極貧の環境にある少年少女の肉体を使った生体臓器移植についてのリポートである。きわめて社会性の強い主題であり、その主題にふさわしいルポルタージュ風の乾いた記述だったがあえて「小説」として提示したのは、梁石日の取材した現実のあまりの生々しさゆえであろう。取材者、執筆者の危険の問題もあったに違いない。そしてこの題材をドラマチックに再構成するにはあまりにも重い現実があったに違いないように思う。
センセーショナルな主題である。経済格差による支配-被支配の関係が現代社会においてもっとも先鋭的なかたちで現れているのが、発展途上国での少年少女売春と生体臓器移植という現実であるように思う。ここでは弱者は、強者の欲望と生存を支える家畜でしかない。
映画には原作で提示されたショッキングな現実の困難を誠実に映像化されていたように僕は思った。日本・タイの役者たちの演技がつくりだす雰囲気には弛緩したところが感じられない。現在もなお続くこの陰惨な現実に立ち向かう英雄の姿を描くのではなく、この現実にショックを受け、翻弄されつつも、この現実が提示する闇の深さにいやおうなく引き込まれていく人間たちの姿を描こうとする意図を僕は感じた。われわれが日本で享受している現実の楽天性が激しく揺さぶるような、われわれの世界と隣接した別の世界の姿をこの映画は示している。