閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

こども音・楽・館2008

http://www.tpo.or.jp/japanese/concert/kodomo2008/index.html

チョン・ミョンフン指揮・監修による子供向けのクラシック音楽の企画ということでかなり期待して聴きに行った。しかもフランス近代の名曲をそろえたプログラムである。チョン指揮による《海》は数年前、パリのシャトレ劇場でラジオフランス・オケの演奏の感動的にすばらしい演奏が忘れられない。あのしびれるような感覚をこどもも味わうことができればいいな、と思って小学二年の娘と娘の友達を連れて行ったのだけれど。
超満員かと思っていたら、案外空席が目立つ客席にちょっとびっくりした。チョンのドビュッシーを3500円で聴くことができるというのに!
最初に演奏した《アルルの女》は東京フィルと、即席に結成された子供中心のオケの共演で、やっぱり演奏はそれなりでいまひとつ楽しむことができなかった。チョンならではのダイナミックな味わいも楽しむことはできたし、一回きりの「祝祭」的公演ならではの熱さはあったけれど。
ドビュッシーの《海》も娘が退屈してぐずったりしたことも影響して、音の重なりの中に身を沈めるような感覚を味わうことができず。演奏の密度も、比べるほうがどうかしているのかもしれないけれど、正規の演奏会での演奏に比べるとかなり落ちる感じがした。観客の反応も、チョンに申し訳なくなるほど、鈍い。
このあと、浪曲師の国本武春氏が登場する。あの弛緩したサントリーホールの雰囲気のなかで、強引に観客のこころをつかみとる芸力は凄いし、オケとの共演(チョンが指揮!)での浪曲仕立ての《ダフニスとクロエ》も面白かった。でもこんな際物をチョンが指揮するのは、なんか心苦しいような気がしてしまう。
「ホンモノの」《ダフニスとクロエ》の演奏が浪曲版のあとにあったが、浪曲版と国本武春インパクトの強さに、演奏がかすんでしまった感じがした。子供が多い観客の集中力もとぎれてしまい、散漫な印象の舞台になってしまった。

こども企画ならではの面白さを期待して聴きに行ったのだけど、「宝の持ち腐れ」というか、少なくとも僕にとってはチョンを通して音楽の魅力を十全に味わうにはかなり物足りない企画だった。「子供企画」ならではのゆるさを感じた。