閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

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ATTENTION, PLEASE! Vol.V
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  • 作・演出:山縣有斗
  • 照明:榊原大
  • 音響:花澤孝一
  • 出演:かなざわさち、樋口好未、白樺真澄、山村誠二、山縣有斗
  • 上演時間:約2時間
  • 劇場:王子小劇場
  • 評価:☆☆☆★
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ゴーギャンの大作「我々はどこから来たのか、我々は何者なのか、我々はどこへ行くのか」の主題が、現代の日本を舞台に演劇的に敷衍されている。
交通事故によってことばの記憶まで失った男が、ゼロから再び生を歩む過程を通して、ゴーギャンの作品タイトルとなっている、人間存在に対する根源的な問いかけがなされる。
脚本がよく練られている。平行する複数のプロットが、ゴーギャンの作品へと集約し重なり合う。場面展開のテンポがよく、変化もあって、見ていて退屈しない。最後のほうの場面で主人公がゴーギャンの絵に邂逅する場面は感動的だった。
きまじめで青臭い主題を、誠実に正面から扱っているにもかかわらず、ナンセンスなギャグの挿入とスピード感ある展開で、全体的に明朗な雰囲気のなかでわかりやすく作品が提示されている点もいい。作者のバランス感覚のよさを感じる。自閉的な韜晦に陥らないところが美点ではあるが、それと表裏一体でくっせつしたいびつさがないところが個人的にはちょっと物足りない。でもこれは作者の人柄のよさ、まっとうな感覚が反映されているのだと思う。社会派のエンターテイメント作品としてよくできている。テレビドラマとして放映されても違和感がない、逆にいえば、脚本に演劇臭さ、芝居臭さがあまり感じられない。

全体に役者の芝居が軽く流れすぎているように感じられる点が気になった。展開はスピーディだが、演技にどしっとした重さが感じられないのだ。

ダンサーにものすごく可愛らしい子がいた。けれどダンスの場面は蛇足だと思った。話の流れは阻害してはいなかったけれどいかにも出番をわざわざ付け加えたというかんじがした。