閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

女と男のいる舗道

女と男のいる舗道(1962) VIVRE SA VIE

モノクロ映像の鮮烈で鋭角的な美しさ、エピソードの切り取り方の唐突さがもたらす乾いたショック、そしてアンナ・カリーナの人形的コケットリーにひき込まれる。作り手の気負いが感じられるきざですかした映画だ。しかしその尖った感じが洒落ていて格好いい。
原題はVivre sa vie「自分の人生を生きる→好きなように生きる」。あれが彼女の生き様か。徹底した自己責任を引き受けて、主人公のナナは自分の好きなように生きる。強烈な吸引力を持つコケットリーに自身も振り回されながら、彼女は流れのままに転落していく。彼女はその転落に抗う意志などないように見える。自然に堕ちていく彼女の内面は空虚だ。その空虚な内面に意味が吹き込まれようとしたときに、彼女の生は突然、唐突に終わる。生の現実をシニカルにつきはなして提示する最後の場面は強烈だ。いきなりどーんと突き飛ばされたような気がした。