ソチエタス・ラファエロ・サンツィオ Societas Raffaello Sanzio
http://festival-tokyo.jp/program/inferno/
- 作:ロメオ・カステルッチ
- 演出/舞台美術/照明/衣装:ロメオ・カステルッチ
- 音楽:スコット・ギボンズ
- 振付:シンディ・ファン・アッカー、ロメオ・カステルッチ
- 舞台美術協力:ジャコモ・ストラーダ
- 美術/機械/人工装具:イストヴァン・ジッメルマン、ジョヴァンナ・アモローゾ
- 出演:アレッサンドロ・カフィーソ、マリア・ルイーザ・カンタレッリ、エリア・コルバーラ、シルヴィア・コスタ、サラ・ダル・コルソ、マノーラ・マイヤーニ、ルカ・ナヴァ、ジャンニ・プラッツィ、ステファノ・クエストーリオ、シルバーノ・ヴォルトリーナ および 現地エキストラ50名
- 上演時間:80分
- 劇場:池袋 東京芸術劇場中ホール
- 評価:☆☆☆★
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正直、期待はずれだった。ヨーロッパで高い評価を受けているだけあって、当然相当なレベルの表現技術の斬新さとアイディアの洗練はある。面白いイメージがなかったわけではなない。冒頭の何匹ものシェパードにかみつかれる場面やもやもやとした黒い布が雲のように舞台左上を漂うイメージ、そして燃えるピアノの場面などインパクトのある絵はいくつかあった。寝不足状態で昼ご飯を食べたあとの公演だったけれど、眠くなったりはしなかった。しかしダンテの『神曲』の舞台化としてはものすごく物足りない。いやよくプログラムを見るとダンテの『神曲』の舞台化とはうたっているわけではなかった。こっちのはやとちりか。それにしても拍子抜け。
こういった「ヴィジュアル系」「インスタレーション系」のすかした雰囲気の舞台に対しては、最近、あまり好意的な感想を持てないことが多い。
少なくとも原作があるテクストを舞台に載せる場合には、原作のテクストと演出家・役者が格闘した痕跡を舞台上で私は見たい。他者の書いたテクストを、受け入れ、咀嚼し、自らのものとして取り込んだ上で、再解釈し、そこからまた新たな表現をはき出していくというのは、相当な難行であるように私は思う。ダンテの『神曲』というのはかなり手強いテクストであるはずだ。いわんやそれを舞台化するとなると。カステルッチの『神曲─地獄編』には、ダンテの巨大なテクストと演出家が真摯に格闘した痕跡を私は感じることができなかった。あそこで演じられているものは、ダンテのテクストの実体とはほとんど関わりのないものだった。テクストの梗概を聞きかじって、そこからイメージを膨らませた作品である。おしゃれなコマーシャル・フィルムのような舞台。その空虚さに私はしらけた気分になってしまった。
最初からダンテ『神曲』とは無縁のものだと思って見に行けばよかったのだ。