閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

渇き

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渇き(2009) THIRST

オールド・ボーイ』の衝撃以来、パク・チャヌク監督の作品は必ず見ている。今の韓国人映画監督のなかで私が好きな四大監督の一人である。あとの三人はキム・ギドクポン・ジュノイ・チャンドン。映画をある程度の数見ている人なら誰でもこの四人を挙げると思う。

敬虔なカトリックの司祭が浅ましく人の血を求めるおぞましい吸血鬼になってしまう話。吸血鬼譚に奴隷同然のみじめな結婚生活を送る美貌の人妻との恋愛がからむ。
『渇き』には韓国映画界を代表する名優ソン・ガンホが出演している。ヒロインのキム・オクビンが八〇年代の日本のアイドルを思い起こさせる生意気顔の美女。後半は彼女も吸血鬼になってしまうのであるが、吸血鬼化した後のばっちり化粧を決めたときの美しさ、愛くるしさは相当なもんだ。

濡れ場もたくさんありキム・オクビンが美しい裸体をさらしているのであるが、これがあまりエロくない。即物的というか。チャヌク作品ではかつて『復讐者に哀れみを』でペ・ドゥナがヌードになる場面があったのだが、これも脱ぎ損といった感じの場面だった。

奇妙でとらえどころのない話だった。吸血鬼もので、その約束事は踏まえてはいるけれど、物語の運びは娯楽作品ぽくない。物語のベースはゾラの長編小説『テレーズ・ラカン』だと言う。私はこの小説は未読。お話展開よりも、視覚的にも心理的にもグロテスクで悪趣味な場面をいかに提示するかに重点が置かれている。滑稽でかつおぞましい、そして目を覆いたくなるような痛い場面がたくさんある。「巨匠」となったパク・チャヌクが自分の悪趣味を存分に楽しんで表現しているように思えた。

ヘンテコな映画で退屈はしなかったけれど、パク・チャヌク作品としては私はあまり好きな作品ではなかった。「吸血鬼」もの自体に私があまり興味が持てないこともあるが。満足度は中くらい。