閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

黒塚 Sept.

群馬県立前橋南高等学校演劇部

  • 作:原澤毅一(演劇部顧問)
  • 演出:黒澤理生(2年)
  • 上演時間:60分
  • 劇場:三宅坂 国立劇場大劇場
  • 評価:☆☆☆☆★
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全国高等学校総合文化祭、演劇部門の最優秀作品。
高校生の演技もよかったが、脚本がとてもよくできていた。
この高校演劇部は能を翻案した戯曲をここ数年上演してきたらしい。今回の戯曲も謡曲「黒塚」について言及はされている。
しかし全体の枠組みは演劇部員自身が自身を演じるメタ演劇部ものになっている。時は昨年の9月始め、インフルエンザ騒動などのためか学校は休校状態でいつ自宅待機が解除されるかわからない。うだるような残暑の午後遅く、演劇部員たちが副部長(女性)の部屋へと集まり、次のコンクールの演目について話合う。宙ぶらりんの状態で前に進もうとするもののそのエネルギーがわかない状態。そうした倦怠した日常の再現されるなか、部屋の住人である副部長の妄想が入り込む。ハイパーリアリズムと不安感に満ちた妄想的世界が混じり合う、このコンビネーションが絶妙だ。学生の演技の雰囲気には五反田団を彷彿させるところもあった。だらだら感が独特のリアルなリズムを作り出してる。主演の副部長役の女優が可愛い。
高校演劇とはいえ全国大会優秀校になるとやはり大したものだ。一般の公演レベルで考えても相当面白い作品で、こまばアゴラ劇場などで上演されても遜色はない出来映えだと思った。
作品は小劇場演劇風で国立劇場大劇場での上演はかなり無理がある。せめて国立劇場小劇場あるいは新国立小劇場ぐらいの大きさの会場だったら、もっとポテンシャルを引き出せていたと思うのだけれど、もとより無理は承知の上の上演だろうしどうしようもない。演じる高校生たちにとってはまさに一世一代の大舞台のわけだから、こういった大劇場のほうが思い出としては強烈かもしれない。