- 作・演出:坂手洋二
- 美術:伊藤雅子・じょん万次郎
- 照明:竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
- 音響:島猛(ステージオフィス)
- 衣裳:伊藤雅子
- 振付協力:矢内原美邦
- 出演:剣幸、円城寺あや、中山マリ、小山萌子、鴨川てんし、猪熊垣和、川中健次郎、松岡陽子、杉山英之、他
- 上演時間:2時間半
- 劇場:東池袋 あうるすぽっと
- 評価:☆☆☆
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「かもめ」「ワーニャ」「櫻の園」「三人姉妹」の四作品を坂手流「現代能」の形式で翻案・圧縮したもの。上演時間は二時間半。
私には今ひとつ面白くなかった。「かもめ」は原作の断片のコラージュみたいで何が何だかわけがわからなかったし、「ワーニャ」は抜粋といった感じか。「櫻の園」では原作の後日談が原作のテクストを引用しつつ展開される。「三人姉妹」が一番面白かった。これは数年前に燐光群が上演した「上演されなかった三人姉妹」の改訂縮小版だと思う。設定が内戦状態の都市で軍によって占拠された劇場の廃墟に変更され、戦争の悲惨と狂気と「三人姉妹」のテクストの内容が互いに反応しあう。四作品をコンパクトにまとめて一挙に上演するところに狙いがあったのだろうけれど、個人的には最後の「三人姉妹」だけを90分じっくり見たかった気がする。
坂手氏が自分独自の「能」という形式のなかに、チェーホフの戯曲を閉じ込ようとする意図が正直今ひとつわからない。今回の舞台で能を意識させるのは複式夢幻能における「死者の回想」という形式、正方形の舞台とすり足での移動だったが(他にも形式面での類似はいろいろ指摘できるのだろうが)、あえて燐光群/坂手洋二がこの形式に原作を閉じ込ようとすることの意義が私にはよくわからなかった。圧縮して窮屈な思いを原作にさせるくらいなら、原テクストをそのまま上演したほうがよいのではなどと思ってしまう。しかも今回の翻案は原作を知らない人にはほとんど意味不明の舞台になっているのでないだろうか。アンソロジーとしては昨年の「現代能イプセン」のほうが成功しているように思った。
原作からインスピレーションを受けつつ、それを現代の状況と結びつけ自由に発展させた最後の「三人姉妹」が私には一番面白く思えた。