閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ニクーリンサーカス公演

東京ドーム・ニクーリンサーカス 公式サイト | ビックリとニッコリがたっぷり

  • 会場:水道橋 東京ドームシティ JCBホール
  • 上演時間:2時間15分(休憩15分)
  • 評価:☆☆☆☆
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二月はじめにシルク・ドゥ・ソレイユを見て、もっとサーカスを見てみたくなった。ネットを検索するとちょうど2/11から3/21まで東京ドームに隣接するホールでニクーリンサーカスの公演が行われることを知った。
http://www.date-navi.com/future/20110205/index.html
ロシア、モスクワに常設劇場を持つ伝統あるサーカス団らしい。動物を使った曲芸も交えた古典的な様式のサーカスということでたちまち好奇心をかき立てられた。
ニクーリンサーカスの入場料はシルクより安い。それでも一番高いRS席は9000円、S席は6000円、当日席のA席は3000円する。ただし最後の当日A席の引換券を新聞販売店がどうやら大量に配っているようで、ヤフオクに1500円ぐらいで出回っている。この引換券に1000円上乗せすればS席のチケットを購入できる。ヤフオクで一枚1500円で入手した。

開演90分前から引換券のチケット交換がはじまるのだが、開演60分ほど前にサーカスの会場がある東京ドームの周辺は平日午前にも関わらずかなりの人手だった。すごい人気なんだなと思ったらその人手の大半は東京ドームで開催されている世界らん展日本大賞のものだった。ニクーリンサーカスのチケット窓口は空いていた。手持ちの引換券に1000円を加えてS席のチケットを入手した。
週末の状況は知らないが平日の観客動員はかなり苦戦しているようだ。観客の大半は老人と就学前児童で客席は半分も埋まっていない。この種のスペクタクルだとなおさらがらがらの客席はいたたまれない感じがする。

演目は前半に六演目、休憩15分を挟んで後半に五演目で、上演時間は休憩込みで2時間15分。空いている客席は寂しかったけれど、パフォーマンスはおおいに楽しんで見ることができた。シルク・ドゥ・ソレイユのように全体に物語性を付与して、壮麗で幻想的な演出で各演目を物語の枠組みのなかで構成するのではなく、クラシックの名曲の調べに合わせヴァラエティに富んだ演目をアンソロジーのように並べるというスタイルの構成だった。各演目の見世場ではドラムロールで盛り上げるという定型的な演出である。アクロバットの技芸やそのレベルについてはシルク・ドゥ・ソレイユとそう大きな違いがあるわけではない。各演目の装飾としてバレエが積極的に用いられていたことと熊や犬、馬といった動物を使った曲芸が盛り込まれていることがニクーリンサーカスの特徴であるように思った。熊、犬の芸は人間がなかに入っているのではないかと思うほどの滑らかな動きだった。特に犬のサーカスでの犬たちのスピーディな動きとプログラムの展開の軽快さが楽しい。最後の演目は馬のサーカスで、快速で円形舞台を回り走る馬を使った様々な曲乗りが披露されたが、最後のほうは馬が興奮してしまいうまくいかない技芸もあった。空中ブランコは高さがなかったので迫力はいま一つだった。見せ場で二回失敗があった。そのため三回目が成功したときには大喝采となった。
チェルノーフという演者によるジャグリングの技術がすばらしいものだった。小型のバレーボールほどのかなり大きな玉を使ったジャグリングで、最後にはそれを使って七つ玉のジャグリングを行った。これは本当に驚くべき技芸だ。演技の終了後に「ブラボー」の喝采を送った。オープニングのタンブリング・アクトの見事なコンビネーション、二番目にあったフラフープを使った舞踊的な曲芸の美しさも印象に残る。道化の客いじりはシルクに比べると控え目だった。バレエの場面が多く、全体に大柄な演者の身体の美しさが際立つ舞台だった。

観客の少なさゆえに若干盛り上がりに欠けたのが残念だったが、それでもサーカスの楽しさと高揚感というのは格別のものがある。これだけの人数の演者の様々な芸を二時間も楽しむなんて実に贅沢な娯楽だと思う。サーカスや大道芸を見ているとこうした芸の伝統が中世や古代、さらにそれ以前までずっと遡ることができるという芸能の歴史の重みを感じて、なんかじんときてしまう。もっとも古代まで遡ることができる職というのは芸能に限らないのであるけれど。