- 作者: 小谷野敦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/05/11
- メディア: 単行本
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- 評価:☆☆☆☆
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テレビドラマ、大衆小説、子供番組から古典文学作品まで、古今東西の幅広いジャンルの作品のなかから、「友達がいないということ」を巡ることばを拾い、それを再構成したコラージュのような趣のエッセイ。このタイトルの本を手に取る読者で友人に恵まれている人間はほとんどいないはずだ。そうした想定される孤独な読者に対して著者の記述は誠実で同情的だ。著者自身、友人が少ないことで深刻な孤立感を味わったことを告白している。しかし友達がいることのメリット、友達がいないことで必然的にもたらされる孤独の侘びしさについても、冷徹に描き出している身も蓋もなさはいかにも小谷野氏らしい。もちろん既存の「友人論」の欺瞞や無効性についても容赦ない。
時折挿入される小谷野氏自身の「友達がいないこと」についての体験の記述に胸がきりきりと痛んだ。彼が書くような屈辱的な思いをしたことがある人間は少なくないはずだ。乾いていた傷口のかさぶたをはがすかのように、小谷野氏は率直に忌まわしい過去の記憶と向き合っている。そういった出来事を決して「なかったこと」にしない。