閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

毬谷友子シャンソンコンサート『MARIYA@CHANSON〜命 3.11』

MARIYATOMOKO WORKS

  • 会場:渋谷 JZ Brat
  • 曲目:《これからは》、《再会》、《群衆》、《悲しきマリー》、《老夫婦》、《ラストダンスは私に》、《私の村は水の底》、《命》、《ろくでなし》、《百万本のバラ》、《王様の牢屋》、《アコーディオン弾き》、《愛の賛歌》、《The Rose》、《虹の橋》
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『MARIYA@CHANSON〜命 3.11〜』と題された毬谷友子のシャンソン・コンサートに行ってきた。コンサートのタイトルからわかるとおり震災の犠牲者に対する哀悼の意がこめられたコンサートだ。もともとこのライブは3月末に行われるはずだったのだが、震災のため開催が延期されていた。

15時からと18時半からの二回のステージで、それぞれプログラムが異なるという話だったので通しで見た。5時間以上ライブハウスにいたことになる。場所は渋谷のセルリアンタワー東急ホテル2階にあるJZ Bratというライブハウス。はじめて行った場所だったが、シックでおしゃれでデートによさそうなところだった。たまには妻と二人でこういった場所に行きたいのだけれど、誘っても極めて稀にしか付き合ってくれない。子供がもうちょっと大きくならないと無理かな。妻じゃなくてもこういうライブにはできればきれいな女性を同伴してみたいものだ。

第一部、第二部とも十分の休憩をはさみ一時間四十五分ぐらいのステージだった。プログラムが異なるということで通しチケットを購入したのだけれど、実際にはほとんど変更はなかった。うー、これはちょっとなあ。全力でパフォーマンスを行っている毬谷さんの状態をみると、二本それぞれ違うセットでのコンサートは不可能だとわかったけれど。
十四曲が歌われた。うち十二曲は毬谷さんのピアノ弾き語りでの演奏。二曲はアコーディオンの伴奏での歌唱だった。最後の《愛の賛歌》だけはピアノとアコーディオンの合奏が入る。

これまで芝居のなかで毬谷さんが歌うのは何回か聞いたことがあって、歌が上手だなとは思ってはいたけれど、こうやってコンサートというかたちで聞くと改めてその歌唱力の高さがわかる。まるで複数の歌い手が中にいるかのような多彩の歌声であり、表現のニュアンスもとても豊かだ。ピアノの演奏技術も素晴らしい。歌詞はすべて日本語だったが、日本語の歌詞を「語り」として巧みに旋律に乗せていた。語りと旋律を行き来しながら、物語的な世界を再現するシャンソン特有の雰囲気を、日本語の歌詞であれだけ味わうことができるとは思わなかった。シャンソン毎に異なった人物を演じているかのような演劇性の強いパフォーマンスだった。第一部ではその表現力にすっかり魅了され、毬谷さんの歌語りのなかに入り込む。その圧倒的な叙情性に聴きながら涙してしまった。

で一時間の休憩をはさんではじまった第二部だが、こちらもけっこう疲れていたのもあるけれど、毬谷さんも第一部で全力を出し切ったというかんじで集中力を欠いていたような感じがした。第一部だけでよかったかな。まあそれでも五時間も生毬谷と接することができたので構わないのだが。

弾き語りの毬谷さんは声も姿も美しく、近くを通るととてもいい匂いがする。女神みたいだ。女神を崇拝に来たみたいな一人中年老年男性観客が私以外にも何人かいた。あれで五十歳だからなあ、女優ってのはすごいもんだと思う。