閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

裸の島(1960)

新藤兼人の代表作。倒産目前だった新藤の独立プロ、近代映画協会はこの作品がモスクワ国際映画祭で最高賞を受賞することで何とか息を吹き返したという。真水のない瀬戸内海の小島に住む四人家族の話。台詞はない。夫婦は船を漕いで本土に行き、水くみをして戻ってくる。水の重さでしなる天秤棒をかついで、島の高台にある畑と家に水を運ぶ。とにかくひたすら辛そうで単調な水くみをする場面が繰り返される映画。ときおりこの単調さに若干の変化を与えるエピソードが挿入される。真水のない島での不便きわまりない生活、いったいなんでこんな苛酷で単調な生活に固執するのか、問わずにおられない。彼らの生活は人生そのものの寓意なのだろうと思う。嫌になるほど退屈で延々と続く日常。時折襲いかかる不幸。でもその合間に思い出したように訪れる小さな喜びの記憶を糧として、私たちは人生を生きていくことができるような気がした。林光の音楽の素朴で牧歌的な旋律がいい。