閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ゆりの木夏まつり 2011年

  • 出演:ソワレ、ワイルドグリーンズ 他
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20、21日は居住している、板橋区のゆりの木通り北団地の夏まつりだった。数百世帯の中規模の団地の夏まつりである。

今年は娘が参加している団地の共同花壇ボランティアで出した綿あめ屋の当番に、娘と妻とともに入った。妻は他にPTAで出していたチヂミと堅焼きそばの店の当番も。綿あめの売り上げは花壇に植える花の苗の購入費用となる。私自身は綿菓子は食べにくいし、味も単調なので好きではないのだけれど、こういうお祭りとなると綿あめは定番もので子供は特に買ってみたくなるものらしい。綿飴を作る機械は役所から借りた。作るのはけっこうコツがいる。私はお金と商品の受け渡ししかしなかった。作ってみたかったけれど、けっこうな行列ができていて、綿飴作り練習するような時間はなかったのだ。綿飴名人のおじさんが二人ほどいて、彼らがほとんど作るの担当。うちの娘は教えて貰って何個か作ったそうだが。こうした模擬店というのはやってみると案外楽しいものだ。

うちの団地の夏まつりの目玉はステージである。団地は最近老人世帯が多くなり、かつてと比べるとかなり活気は乏しくなっているらしいが、夏まつりはここ数年、予算減にも関わらず活気を取り戻している。上々颱風のベーシストの西やんが地元在住で、彼が主宰する大所帯バンド、ワイルドグリーンズが夏まつりに登場するようになってから、夏まつりステージが盛り上がるようになった。東京辺境の団地夏まつりにはおよそそぐわない素晴らしいライブを楽しむことができるからだ。三年前から西やんのつてで、シャンソン歌手のソワレさんもこの夏まつりで歌うようになった。

ソワレさんは新宿ゴールデン街のシャンソン・バーのオーナーでもある。この4月に、SPACのリーディング・カフェのツアーがこのソワレさんのバーで行われるという偶然があった。ソワレさんはネオ・シャンソンと称し、スタンダードなシャンソンのナンバーを、エモーショナルな力強い歌唱で聞かせるスタイルだ。彼のシャンソンを三年前に聞いたことが、日本語で歌うシャンソンの面白さを知るきっかけとなった。
今年は、越路吹雪のレパートリーだった《愛の賛歌》、《ラストダンスは私に》のほか、民謡や歌謡曲を交えたプログラムだった。70年代アイドルを思わせる中性的な雰囲気を持った歌手だが、今年は着物姿での登場だった。徐々に盛り上がり、最後は舞台前で老若男女の観客が踊った。酒が入っていることもあり、けっこうのりがいいのだ。私も思わず踊った。こんなことは滅多にないのだけれど。なんかのせられてしまったのだ。

オオトリはワイルドグリーンズ。ことしはアラビアンナイトということでベリーダンサーをゲストに迎え、ダンサーの妖艶なダンスとトルコ音楽風のナンバーが並んだ。さらにマダム岸のボーカルで《カルメンのハバネラ》、《フィガロの結婚から恋とはどんなものかしら》、《オペラ座の怪人》などのよく知られた名曲が、打楽器がフューチャーされたちょっとプログレっぽい雰囲気のかっこいいアレンジで聞かせる。団地の子供から老人まで観客はおおいに盛り上がる。あの乗せかた、本当にプロって凄いなと思う。フィナーレはご当地ブルース、《成増町ブルース》で締め括られた。いやあ、爽快。実に気分がいい。
散文的で素っ気ない団地の空間が、この数時間は狂騒的な異世界に変貌する。こんな没個性の極みのような場所でもこんな素敵な祝祭が可能だとは!