閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

オテロ

2011/2012シーズンオペラ「オテロ」特設サイト|新国立劇場

  • 原作:ウィリアム・シェークスピア
  • 台本:アッリーゴ・ボーイト
  • 作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
  • 指揮:ジャン・レイサム=ケーニック Jan Latham-Koenig
  • 演出:マリオ・マルトーネ Mario Martone
  • 出演:ヴァルテル・フラッカーロ(オテロ)、マリア・ルイジア・ボルシ(デズデーモナ)、ミカエル・ババジャニアン(イアーゴ)、松位浩

(ロドヴィーコ

  • 美術:マルゲリータ・パッリ
  • 衣裳:ウルスラ・パーツァック
  • 照明:川口雅弘
  • 再演演出:江尻裕彦
  • 舞台監督:大澤裕
  • 合唱指揮:三澤洋史
  • 合唱:新国立劇場合唱団
  • 児童合唱:世田谷ジュニア合唱団
  • 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
  • 芸術監督:尾高忠明
  • 劇場:初台 新国立劇場オペラ・パレス
  • 評価:☆☆☆☆★
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久しぶりに生のオペラの舞台を見に行った。ヴェルディの代表作とされる《オテロ》を観るのは今回が初めてだったが、演劇的スペクタクルとして非常に完成度の高い作品だと思った。十九世紀オペラの劇作術の洗練の極みがこの作品にはあるように感じられれた。登場人物を削り、筋を明解にすることによって、原作の豊かさが削がれることなく、むしろドラマとしては《オテロ》のエッセンスが、音楽との見事な融合のなかで、凝縮されていた。

演出と演奏はこの劇作術の成果を堅実に、効果的に引き出していた。本水や火を使ったビジュアルはインパクトがあったし、照明もよかったが、何よりも演者の立ち位置が舞台のなかできっちり決まっていていることが印象に残った。人物や美術の空間配置が物語展開と人物の心理状況を象徴的に表しているように感じらえた。急な代演だったデズデモーナは評判通りよかった。またイアーゴの人物造形も興味深いものだった。演奏、演出、演者のパフォーマンスとも非常に高いクオリティの舞台であったが、どこか「新劇」的端正さでまとまっていて、エネルギーの破綻が感じられないところに逆にちょっと物足りないところもあった。

しかしあのクオリティの舞台で、しかもヴェルディの代表作の公演というのに、安いD席、C席を除き、一階、二階席に空席がたくさんあるのは残念な気がした。高い席の不入りは景気がよくならないとどうしようもない部分があるかもしれないが、宣伝等、何からの手段を高じて客席を埋める努力は必要なのではないだろうか。国立劇場ゆえ、もう少しチケット代が安いとありがたいのだが。