- 作:武田泰淳
- 演出:関美能留
- 美術:石原敬
- 照明:岩城保
- 舞台監督:森下紀彦
- 出演:江前陽平、大倉マヤ、角北龍、工藤真之介、呉キリコ、近藤佑子(三条会)、榊原毅(三条会)、篠崎大悟(ロロ)、立崎真紀子(三条会)、渡部友一郎(三条会)
- 劇場:下北沢 ザ・スズナリ
- 評価:☆☆☆☆
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これまで様々なバージョンで上演されている三条会の定番の演目『ひかりごけ』の上演、私が三条会のこの演目を見るのはこれが4度目だったと思う。最初に見た三条会の作品がこの演目だった。三条会はここ数年、団体の中心的メンバーだった役者が次々と脱退している。この四月には強烈な個性を持つ看板女優の大川潤子までがやめてしまった。
三条会は既存戯曲を上演する団体である。戯曲は関美能留によって徹底的に読み込まれている形跡があるが、その独創的解釈と特異な役者たちによる表現は三条会ならでわの強烈な個性があった。これまでの上演作はいずれもオリジナルのタイトルの前に「三条会の」とつけるのがふさわしい独特のデフォルメの加えられたものだった。
大川潤子を欠いた今回の『ひかりごけ』は、独創的なギミックによるグロテスクなデフォルメは控え目になり、演出は原作の内容により忠実によりそったものとなっていた。関美能留にとっては愛着深いこの作品を全面的に改訂したバージョンの上演が、新しい三条会の力強いマニフェストとなっている。原作に内在する象徴の核となる部分を抽出し、再構成した美しい舞台となっていた。
大川潤子が客席にいた。彼女はこの舞台を見てどう思ったのだろう。三条会の演劇ファンは皆心の中で思ったに違いない。素晴らしい舞台だ。でも寂しい、物足りない舞台だ。