閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜

http://www.spac.or.jp/f12mahabharata.html

  • 演出:宮城聰
  • 台本:久保田梓美
  • 音楽:棚川寛子
  • 出演:阿部一徳、赤松直美、泉陽二、いとうめぐみ、伊比井香織、大内米治、大高浩一、大多和芳恵、日下範子、黒須芯、桜内結う、鈴木麻里、鈴木真理子、大道無門優也、たきいみき、寺内亜矢子、中野真希、仲村悠希、前田知香、牧山祐大、美加理、山下ともち、山田裕子、山本実幸、横山央、吉植荘一郎
  • 照明:大迫浩二
  • 空間:木津潤平
  • 音響:水村良
  • 美術:深沢襟
  • 衣裳デザイン:高橋佳代
  • 制作:大石多佳子
  • 上演時間:2時間
  • 会場:舞台芸術公園 野外劇場「有度」
  • 評価:☆☆☆☆☆
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「スカラ=ニカラ」のあとは、今日の本命、ク・ナウカの代表作のひとつとされる『マハーバーラタ』だが、上演の前に、静岡県知事やルクセンブルク大公国領事を招いた演劇祭開幕セレモニーが、『マハーバーラタ』が上演される野外劇場「有度」の前で行われた。SPAC俳優で、古典戯曲を読む会の立ち上げ人である奥野晃士さんがセレモニーの司会だった。プロレス実況中継風の過剰に大仰でユーモラスな司会ぶりに、会場の雰囲気はなごんだ。静岡市長は「ムーサイの歌」という詩神を讃える詩を朗唱し、観客がそれに応えるという形でセレモニーが幕を閉じた。市長が着替える間の宮城さんの話も面白かった。この野外劇場でいろんな土地の神々に取り憑かれるような気がする、演劇人の役割は日常のなかに起こりうるさまざまな不条理で不可解な事柄を引き受けること、などといった話だったが、この話の内容自体が『マハーバーラタ』の伏線になっていた。

マハーバーラタ』二時間は本当に素晴らしい公演だった。宮城さんの言に乗っかって、祝祭劇と呼ぶのは若干の抵抗を感じるのだけれど、しかし芝居がもたらす何ともいえぬ痺れるような高揚感に私も酔った。音と空間と身体と異質な要素が織りなすハーモニーの豊穣さに痺れた。初めてク・ナウカを見た時に感じた驚きと感動の記憶が蘇ってきた。美加理さんの強烈な存在感、阿部さんの語りの自由さ、雄大さに酔う。幸福な結末に向かう場面の怒濤の迫力のなか、観客と役者たち、そして演劇空間が融合し、一体となったような感覚を味わった。