閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

夜と星と風の物語

東京フランセーズ第五回公園

  • 作:別役実
  • 構成・演出・振付:久保山真衣
  • 衣装:本村渚
  • 出演:海出彩菜、佐藤大樹、朝日望、久保山真衣、杉田一成、宇貫貴雄、松本寛子、熊谷裕弥、阿部由佳、戸塚るり
  • 劇場:大塚 萬劇場
  • 上演時間:80分
  • 評価:☆☆☆
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2008年に毬谷友子主演でこの作品を見ていたことを忘れていた。今回、芝居が始まってから気づく。東京フランセーズの主宰者も毬谷友子のこの作品の舞台は見ていたとのこと。本編の始まる前に群舞を交えたレビューとイヨネスコのひとり芝居「ゆで卵のつくり方」が上演される。群舞のパートは、ちょっと宝塚のレビューっぽい雰囲気がある。イヨネスコのひとり芝居「ゆで卵のつくり方」は私は全然面白くなかった。

別役実作「夜と星と風の物語」は、サンテジュジュペリ『星の王子様』へのオマージュとなっている。原作の人物設定を利用しつつ、別役は新たに登場人物とエピソードを付け加え、交錯させることでユーモラスな不条理劇を作り出している。『星の王子様』の優しくて寂しい雰囲気、幻想性は、別役版でも生かされている。毬谷友子が出演した舞台ではバンド演奏が加わり、登場人物が歌う音楽劇となっていた。別役実の作品のなかでは私は好きな作品だ。

東京フランセーズ版では歌の他に、場面、場面のつなぎにダンサーによる群舞を入れる。オープニングのレビュー風舞踊劇も含め、ダンスの使い方はモリエールリュリの《町人貴族》などのコメディ・バレを連想させるものだった。物語の進行役として男女の妖精を導入する工夫も東京フランセーズ版のオリジナルだと思う。この他にもいろいろと多彩な演出上の仕掛けを施していたのだけれど、全体としては雑然としていてまとまりが感じられない。細部の演出も粗く、演技のスタイルも、現代の芝居の感覚だとくどくて古くささを感じた。またちゃちで貧相な舞台美術が、作品のファンタジーを損なっていたのも残念だった。