http://www.spac.or.jp/13_robicru.html
- 原作:ニーノ・ディントローナ Nino D'INTRONA、ジャコモ・ラビッキオ Giacomo RAVICCHIO
- 台本:ふじたあさや
- 演出:イ・ユンテク 李潤澤 Lee Youn-Taek
- 美術:キム・ギョンス
- 照明:チョ・インゴン
- 演出助手:金世一
- 音響:小嶋純真、大塚翔太
- 衣装:畑ジェニファー友紀
- 出演:仲谷智邦、三島景太
- 劇場:静岡芸術劇場
- 評価:☆☆☆☆★
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原作はイタリア人作家が1985年に青少年向き演劇作品として書いたもの。数々の賞を受賞し、世界中の100以上の団体によって上演されているという。言葉の通じない二人の男が無人島に漂着する。島で共生を強いられたこの二人の男の対立から和解の過程を喜劇調で描く作品である。
日本語の台本はふじたあさやによるものだが、最初に上演したときは一人を日本兵とアメリカ兵の組み合わに変更した翻案だったようだ。1999年に秋吉台で行われた芸術祭で日韓の俳優によってこの戯曲が上演され、このときに終戦直後の日本兵と韓国人兵という組合せの翻案が生まれたらしい。
2008年初演SPACでのイ・ユンテク版はふじたあさや版にさらに大きな修正が加えられている。異文化に属し、言語が通じない二人の対立から相互理解、友情が生まれるというのは子供向け物語によく見られる定型だが、SPAC版では役者の多彩で高い身体能力と日韓という文脈を効果的に利用することで、この定型に新鮮な魅力を与えている。
バフチン的な猥雑でエネルギーに満ちた笑いが舞台を満たし、観客参加の要素などさまざまな仕掛けを取り入れられている。サービス精神に満ちた娯楽性の高い芝居だった。狂騒的なドタバタ舞踊喜劇がずっと続くのだが、終盤で怒涛のセンチメンタリズムにより、観客の心は激しく揺さぶられ、大きな感動を生み出される。演出家の思惑通り泣かされた。その後味は実に爽やかで心地よい。