閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

人形芝居燕屋「ハロー!カンクロー/ねずみのすもう」

  • 脚色・演出:くすのき燕
  • 美術:中出三記夫(ハロー!カンクロー)、益子淳(ねずみのすもう)
  • 出演:くすのき燕
  • 上演時間:約45分
  • 劇場:西新宿 芸能花伝舎
  • 評価:☆☆☆☆★
  • http://tsubame.net

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何年かぶりにくすのき燕氏のひとり人形芝居を見た。小1の息子と小6の娘だけでなく、弟夫婦にも声をかけ、弟夫婦とその子供、甥小5、姪小1の総勢大人三名、子供四名の計七名で見に行った。劇場は西新宿の高層ビル街の裏側にひっそりとある元淀橋第三小学校,芸能花伝舎。9月から2月まで月一度、1年1組教室で人形劇公演を行う企画があって、今回の人形芝居燕屋が今期の最終回だった。前回、燕屋の芝居を観たのもここと同じ会場だ。幼児から楽しむことができる子供向き人形劇だが、どういう事情だかしらないけれど、ここでの公演は大人の関係者ぽい観客のほうが多い。

 

演目はカンクローという派手な色彩のとぼけた鳥の人形と演者のリズミカルで軽妙な掛け合いを楽しむ腹話術劇『ハロー!カンクロー』と近世の放浪人形芝居芸人がモデルという出で立ちでやはりひとりで演じる肩掛け人形芝居『ねずみのすもう』の二本立て。どちらも就学前の幼児から楽しむことができる芝居なのだが、大人も笑わされ、引き込まれてしまう非常に魅力的な作品だった。

最初に上演したのは「カンクロー」。とぼけて生意気なカンクローの性格造形は腹話術劇として定型的だと思うのだけれど、脚本がとてもよくできていて子供も大人も非常によく反応して笑っていた。間のとりかた、リズムの軽快さ、人形の動きと人間の動きの連動など、職人芸の円熟を感じた。休憩を挟むと今度は、江戸の人形芝居師の扮装で現れ、肩から掛けた大きな箱を舞台に、片手操作の指遣い人形で二組の人形を動かす。原作の民話「ねずみのすもう」にはかなり大きなアレンジが加えられていて、展開にはスピード感がある。これも脚本がよくできている。ミニサイズの人形を使うなどの趣向の数々や観客への呼びかけやその反応などの即興をうまく取り入れるなど、細部まで配慮の行き届いた完成度の高い作品だった。

子供たちも大喜び。大人の受けもすごくいい。私もとても楽しんで見た。アンコールもあって、それは手を使った『はてしない物語』。「グー、チョキ、パー」の永遠の格闘を芝居仕立てでやるごく短い作品。このナンセンスなミニ芝居もとても面白かった。

 

くすのき燕氏の芝居は、シアター・トライアングルというパントマイム、人形遣い、ピアニストという異なる属性の三人の演者による『Four seasons』という大傑作を見たのが最初だが、明らかに子供向けなのだけれど、大人の観客も巻き込んでしまうような独創的な趣向が芝居のなかに取り込まれている。また見に行きたい。