http://www.seinendan.org/jpn/info/2013/04/engekiten/
平田オリザ演劇展 vol.3で上演された三作品のなかでは、私はこの作品が圧倒的に好きだ。大杉栄と伊藤野枝、関東大震災後の甘粕事件で虐殺されるアナーキストのカップルの最後の二ヶ月の平穏を描く。観客はこの後に二人を襲う惨劇を思いながら、無邪気で率直で微笑ましい風景を眺める。演劇的アイロニーを効果的に使い、静かな日常の描写によって、その背後にある強烈なドラマを観客に意識させる仕掛けが決まっている。この芝居は平田の芝居にしては珍しく、暗転での時間の経過がある。シンプルな技法だけれど、その入れ方も巧い。
一見弛緩した彼らのやり取りの細部に極度の緊張を感じ取るながら、厳粛な気持ちで芝居を見た。