青年団 平田オリザ演劇展 vol.3
- 原作:宮沢賢治
- 作・演出:平田オリザ
- 美術:杉山至
- 証明:西本彩
- 音響:泉田雄太
- 映像:ワタナベカズキ
- 衣装:有賀千鶴、正金彩
- 出演:菊池佳南、富田真喜、小林亮子、たむらみずほ、渡辺香奈
- 劇場:こまばアゴラ劇場
- 評価:☆☆
今回上演される「銀河鉄道の夜」は、平田オリザが昨年出した高校演劇を題材とした小説、『幕が上がる』のなかで「上演」された作品でもある。小説のなかでこの「銀河鉄道の夜」の脚色や演出のありかたが細かく書かれている。この作品はフランス語版もあり、フランスでも好評を博したという。想定された観客は小学校高学年で、当日パンフには「友人の死を受けとめながら成長していく子どもの物語」というシンプルな演出を採用したとあった。
かなり期待をして見に行ったのだが、今回の《平田オリザ演劇展 vol.3》で上演された3作のなかで唯一期待外れだったのがこの作品だった。
5人の女優で上演され、ジョバンニとカンパネラ以外の役柄は一人の女優が複数の役を演じる。早替わり風の趣向が導入されていた。物語の流れは原作をほぼ踏襲している。
当日パンフには「児童劇の経験の浅い私には良く分からないので、先生方やコーディネーターの意見も聞いてみました」とある。推敲を重ねて完成した作品は、平田による学校劇のパスティシュのような作品となった。学校劇として確かによくできている。教科書のお手本のような作品だ。しかしそれは子供劇に対する彼のステレオタイプが無惨に晒された凡作だった。平田は児童劇というのは、子供というのは「こんなもの」だと思っているのだろう。
現代口語演劇という様式を提唱して現代日本演劇に一つの潮流を作り出した平田が、児童劇となるとこんなにありきたりの作品を作ってしまうことは驚きだ。
児童劇というのは平田にとっては新しいジャンルだし、青年団としてもこのジャンルの開拓には大きな可能性を見出すことができるはずだ。しかしこの作品にしろ、これより以前に作った『サンタクロース会議』にせよ、平田=青年団の演劇活動における戦略的意義はあるだろうが、芸術的意義は乏しい。