ミクニヤナイハラ プロジェクト vol. 5
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- 作・演出・振付:矢内原美邦
- 映像:高橋啓祐
- 舞台美術:細川浩伸(急な坂アトリエ)
- 舞台監督:鈴木康郎、湯山千景
- 照明:南香織
- チラシイラスト:Jignasha Ojha
- 宣伝美術:石田直久
- 映像出演:上村聡、足立智充、矢沢誠、高山玲子、小澤雄志、柴田雄平、関寛之、光瀬指絵、守美樹
- 出演:鈴木将一朗、笠木泉、山本圭祐
- 劇場:こまばアゴラ劇場
- 上演時間:75分
- 評価:☆☆☆★
ミクニヤナイハラを見るのは今回が初めてだった。シェイクスピアの作品のなかでも最もマイナーな作品である『アテネのタイモン』をベースにした作品だとチラシにあったので、粗筋だけは確認しておいた。お人好しでお金持ちのタイモンが友達を毎晩呼んで大宴会をして散財していたけれど、タイモンが文無しになってしまうと友達は彼から離れて行き、タイモンは絶望し、怒り狂うという話らしい。
75分、3人の演者で演じられるミクニヤナイハラの作品、確かに主人公の名前は「タイモン」だが、原作とのつながりは私には見えなかった。原作とのつながりどころか、いったい何が目の前で展開しているのかさえ把握できない。
超早口で台詞が繰り出され、その台詞に合わせて目まぐるしい身体が動く。とにかくせわしい演劇だ。リンゴ、シンデレラをめぐる過剰に饒舌で、そしてその言葉の過剰さゆえに言葉がほとんど意味を喪失しているような世界である。
舞台は常に変容し、動き続けていく。その表現の連鎖はほとんどナンセンスな詩的世界を作り出す。その意味の希薄さ、世界の空虚さに戦慄する。こちらも狂気に包み込まれ、ゆさぶられる。爆笑を誘発するナンセンスなギャグがいくつもあった。しかしその空洞感は、こちらを闇のなかに、不安のなかへと突き落とす。
見ていて楽しい作品ではない。見終わってどっと疲労する、しんどい舞台だった。見ている途中で、久しぶりにパニック発作が起こり、息苦しくなった。はき出される膨大な言葉と動きに発作が誘発されたような気がした。