この日の午前中はラプリーズさんとは別行動。午後は東静岡に移動し、静岡芸術劇場でSPACの『サーカス物語』を一緒に見た。
私はまず駿府城公園のメイン会場3に行き、SPACの大道芸を見た。演目は古事記。
15分ほどの時間で、スサノオの八岐大蛇退治のエピソードが、打楽器のアンサンブル、群読、舞踊、朗唱などを組み合わせた独自の表現で展開する、ダイナミックなスペクタクルだった。昨年の演劇史の演目よりはるかによかったけれど、大道芸の演目としてはやはり異色だろう。既存の大道芸スタイルに囚われず、堂々とSPACの演目を見せるという心意気がとてもいい。平均的な大道芸観客の期待の地平とはずれたものであってもかまわない、「これがSPACです」「こういう世界もあるんです」と観客に挑戦している感じがした。少なからぬ観客は戸惑っただろうけれど、就学前だと思われる小さな子供が「おもしろかったね〜」と言っていた。大道芸フェスの今後の発展を考える上で、こうしたいわゆる大道芸の枠組みから外れたスペクタクルが、大道芸ワールドカップで上演されることの意義は大きいと思う。
SPACの後は駿府城公園内のメイン広場2に移動して、男女二人組のクラウン/アクロバット芸、ウィッティールックを見た。この二人を見るのは今回が初めて。体の柔軟さを利用した芸と一輪車を使った芸が中心。言葉は使わないが、コミカルな動作で観客を笑わせる。女性演者はエキセントリックだが可愛らしい芸風がいい。
ウッティールックの後は、同じ会場で引き続きワールドカップ部門の招聘アーティストのアルベルト&クーパー、その後はパントマイム芸のテンショウを見た。
アルベルト&クーパーは、愛嬌のある小男と強面の大男のコンビによる無言のコメディ。キャラクターの対比は、「トムとジェリー」のようにぴったりはまっている。あっと驚くようなアクロバットではなく、くだらない小技を巧みに組み合わせ、絶妙の間で観客を引き込む。ベタベタしないクールで洗練された手法に感心した。
パントマイムのテンショウは、ベテランの芸人さんのようだが、私は今回はじめてみた。見た目は若作りだけれど、50歳だとのこと。芸も見た目同様、元気がいい。ダンスやマジック、仮面を使った芸などのコンビネーション。各芸の技術は高いけれど、客の乗せ方などはかなりベタな感じで私の好みの芸風ではなかった。テンショウを見たあと、東静岡に移動して、静岡芸術劇場でSPACの『サーカス物語』を見た。『サーカス物語』についてはまた別項でに記す。
東静岡で『サーカス物語』を見た後、駿府城公園でファニーボーンズを見る。日本人と英国人男性の二人組の芸人で、マジック、曲芸、ダンス、コメディなど多彩な芸で観客を引き込む。人形を使った芸もあると書いてあったので、それを期待したのだけれど、ナイトパフォーマンスでは人形芸は残念ながら出てこなかった。