- http://17-movie.jp/
- 上映時間:94分
- 製作国:フランス
- 初公開年月 2014/02/15
- 監督:フランソワ・オゾン
- 製作:エリック・アルトメイヤー、ニコラス・アルトメイヤー
- 脚本:フランソワ・オゾン
- 撮影:パスカル・マルティ
- 美術:カーチャ・ヴィシュコフ
- 衣装:パスカリーヌ・シャヴァンヌ
- 編集:ロール・ガルデット
- 音楽:フィリップ・ロンビ
- 出演:マリーヌ・ヴァクト、ジェラルディーヌ・ペラス、フレデリック・ピエロ、シャーロット・ランプリング
- 映画館:新宿ピカデリー
- 評価:☆☆☆☆
最近はアンニュイで気取っていてもったいぶったフランス映画はもううんざりという気分だったのだけれど、フランソワ・オゾンの新作を見に行ってしまった。オゾンの作品は、2000年の『焼け石に水』から2007年の『エンジェル』まで継続的に見ていたのだけれど、自意識肥大の繊細な人物たちによる優雅で洒落たサスペンスを楽しんでみることがしんどくなって、ここ数年の作品は見ていなかった。今回は魔が差して、なんとなく久々に見に行った。「いやだな、この雰囲気」と思いながら見始めたけれど、徐々に引き込まれてしまい、最終的にはとても楽しんで見ることができた。
物語はとてもシンプルでありきたりだ。パリのかなり裕福な家庭の17歳の娘が主人公。夏、秋、冬、春と四季にひとつずつ、彼女についてのエピソードが展開する。
母親とその再婚相手、弟の4人家族。17歳の夏に海辺のバカンスで知り合ったドイツ人の男の子と彼女は何となく初めてのセックスをする。しかし初体験をすませてしまうと彼女はそのドイツ人の男の子への興味を急速に失ってしまった。初めての性体験をきっかけに、彼女の心のなかに虚無が入り込む。その虚無に彼女はどう対処していいいかわからない。秋になると彼女はインターネットの出会いサイトを利用して、様々な男性と性行為を行い、金を得るようになる。しかし彼女の心に巣くった空洞は埋まらない。常連客の一人であった老人が彼女との性行為中に心臓発作で死んでしまう。うろたえた彼女は、老人をその場に放置して、ホテルから逃げ出す。この事件にショックを受け、彼女は売春をやめる。冬になり、彼女が売春をしていたことが発覚する。母親はショックを受け、彼女を問い詰めるが、精神科医のカウンセリングを受けるが、彼女自身も自分がなぜそんなことをしてしまいたくなったのかがわからない。自分の行為を振り返るなかで、彼女の周囲の人間たちに対する視線はますます冷ややかなものになってしまった。春、彼女は心臓麻痺で死んだ老人の妻に呼び出される。老人が死んだホテルの同じ部屋のベッドで二人は横になる。このとき、彼女は自分が何かを取り戻すことができたような気がした。
こうした人生に対する空虚感に、突然はまってしまう可能性は、多くの人にあるように思う。進むべき道を見失ってしまい、どうしようのなくなってしまう時期、若くて美しい女性であるならば、売春という行為を通して、自分を確かめるという選択肢を取ることも十分にあり得ることのように思える。
主役を演じたマリーヌ・ヴァクトの硬質な表情がとてもいい。シャーロット・ランプリングは終盤に少し出るだけだが、その存在感の異様さは強烈だ。