劇団野の上 第五回公演
臭う女(黒) ~におうひとノワール~
http://www.komaba-agora.com/play/463
- 作・演出:山田百次
- 舞台美術:鈴木健介(青年団・アゴラ企画)
- スタッフ:鳴海まりか、高岡秀伍(劇団プランクスター)
- 相談役:赤刎千久子
- 照明プラン:井坂浩(青年団)
- 制作協力:木元太郎(アゴラ企画)
- 出演:乗田夏子 藤本一喜 山田百次 赤刎千久子 沼山真紀子 三上晴佳(渡辺源四郎商店) 葛西大志(劇団夢遊病社)
- 劇場:こまばアゴラ劇場
- 評価:☆☆☆☆
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山田百次の作・演出作品は、この三月にアトリエ春風舎で上演された河村企画『スマートコミュニティアンドメンタルヘルスケア』が私が初めてみた作品だった。乾いたブラックジョーク満載の学校を舞台としたこの作品がめっぽう面白かっただけでなく、この公演のあとに山田百次が演じた一人芝居の方言劇『あるめぐらのはなし』のインパクトが強烈だったので、彼が作・演出する作品をしばらくのあいだは全て追っかけてみることに決めた。
山田百次のホームグラウンドである劇団野の上は今回が第五回目の公演とのことだが、私が見るのはこれが初めてだった。3月に見た『スマートコミュ』と『あるめぐら』は全く趣の異なる作品だったが、『臭う女(黒)』もやはりというか、この二作とは全く雰囲気の違う作品だった。あまりに予想外の雰囲気の作品に戸惑い、唖然としてしまったところも。舞台美術は学芸会芝居のような粗い書き割りで山のなかのタバコ畑が表現されている。中央にベンチに座る4人の農家のおばちゃんが、作物の選別をしながら南部弁で会話を始める。南部弁のおばちゃんたちによる現代口語演劇かと思えば、彼女たちがそこで選別作業をしていたのは大麻だった。おばちゃんの一人は覚醒剤らしきものを吸引しはじめたりする。方言による超レアリズム演劇のなかに、B級娯楽アクション映画的な展開が強引にねじ込まれる。ミュージカル場面も唐突に。そして最後はシェークスピア悲劇さながらの惨劇で終わる。無茶苦茶、破天荒で自由な作品で、そのあっけらかんとした毒の陽性さに圧倒された。あまりのアナーキーさに悪酔い気味。牧歌的な悪夢のような作品だった。全篇南部弁だったため、会話のディテイルはほとんどわからない。いくつかのキーワードから、はなしの流れはつかめる。この作品は青森でも上演されたとのことだが、青森の観客と東京の観客では受け取っているものが相当違うはずだ。こうした受容のされ方も計算した上での方言劇だ。
仕掛自体がひねくれていて、観客を嘲弄するかのような悪意を感じる。山田百次は一筋縄ではいかない。今後もしばらくのあいだは彼の作品を見続けようと思う。