奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ(2014)LES HERITIERS
- 上映時間 105分
- 製作国 フランス
- 初公開年月 2016/08/06
- 監督: マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール
- 製作: マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール、ピエール・クベル
- 脚本: アハメッド・ドゥラメ、マリー=カスティーユ・マンシヨン=シ
- ャール
- 撮影: ミリアム・ヴィノクール
- 編集: ブノワ・キノン
- 音楽: ルドヴィコ・エイナウディ
- 出演: アリアンヌ・アスカリッド、アハメッド・ドゥラメ
- 映画館:角川シネマ新宿
- 評価:☆☆☆
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パリ郊外の移民地域にある高校の話。学級崩壊寸前の荒れたクラスの子供たちが、一人の歴史教師の導きにより、いい子になっていく。「アウシュヴィッツの強制収容所の子供と若者たち」というテーマでグループ学習を行い、コンクールに応募するという提案を歴史教師が生徒たちに行う。最初は難色を示していた子供たちも学習が進み、知識が増え、収容所生存者の証言を聞くうちに、積極的にこの学習に取り組んでいくようになる。
冒頭の場面が印象的だ。イスラームのスカーフを身につけた卒業生が成績証明書を取りに学校にやって来たが、学校側はスカーフが「宗教的なシンボル」であるから入校を固くなに許可しない。卒業生は激しく学校を批判する。
学校など公的領域における「非宗教性」というルールが、アラブ人差別・排除のための口実になっているというフランスの現実について、この監督がどのように考えているのかははっきりとは示されていない。しかしこの映画で印象的なのは、冒頭の場面をはじめ、いくつかの場面で示されるフランス社会の反イスラム的情景である。バスでアラブ人が白人老女に席を譲ろうとして声をかけるが、白人老女はそれを聞こえないふりをして無視をする。イスラムに改宗して「プライム」というイスラム名で点呼されることを繰り返し要求するものの、それを冷たく拒絶する教員。アラブに対するフランスの建前をどう監督が捉えているのかというのは宙ぶらりんにしたまま、こうした場面が時折挿入されている。
この映画で優れているのは前半部の荒れた教室の描写のリアリティである。こうした荒れた集団を教師がコントロールするには、教師の人格や知識だけでは不可能だろう。何らかの心理操作の技術が必要となるはずだ。
映画の不満は生徒たちの「改心」にあたって、教師がどのように介入していったかのディテイルがしっかり提示されなかった点だ。また後半は実話に基づくとはいえ、図式的な美談にまとまりすぎているが不満だった。実際にはいたはずのあの集団から落ちこぼれてしまっている生徒の存在を想像しながら見た。