閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

映画『勝手にふるえてろ』

furuetero-movie.com

f:id:camin:20180106005850j:plain

生き方をこじらせ、恋愛妄想のなかで生きる屈折した女性の物語。
主演の松岡茉優がとにかく素晴らしい。「こんなに可愛らしく歪んだ女の子がいるなんて!」と思わせる好演。Qの市原佐都子の世界に近いところがあるが、こじらせ妄想が発酵し過ぎてグロテスクな様相を露悪的に見せる寸前で留まっている。その絶妙の危うさが、松岡茉優が演じる人物をさらに魅力的にしている。

映像のなかでシームレスにつながる彼女の妄想世界と現実を抜群の演技センスで表現する。監督の演技演出も細部まで計算しつくされていることがわかる。

FUKAIPRODUCE羽衣の名曲《サロメvsヨカナーン》のリフレインは「一人ぼっちよりもましだから愛している」だが、本当の孤独に陥った彼女が「本当の」恋に行きつくラストの切なさと苦さが感動的だ。これは女性のエディプス・コンプレックスの物語にもなっている。

大傑作。