閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

『秘密の森』シーズン2

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組織にからみとられ、そのなかで翻弄される人間のすがたを見事に描き出した傑作ドラマだ。
人間関係が複雑すぎて、展開を追っていくはかなりやっかいだ。しかし数多くの様々な伏線がきっちりと回収されていく重層的な脚本の仕掛けや、各人物の人間造形の緻密さは驚くべきものだ。韓国の検察vs警察の対立構造というマクロで、重量級の政治的・社会的枠組みを軸に、その組織のなかで動く人間たちのミクロな関係も丁寧に描き出している。
検察にせよ、警察にせよ、このドラマの登場人物たちは根っからの善人でもないし、悪人でもない。それぞれの立場で「正しく」生きていきたいと願っている人たちだろう。しかしたとえ正しく生きようとしていても、人の世はままならぬもので、重層的な人間関係の網のなかで、正しさを貫くことは非常に難しい。われわれは自分自身の弱さや意志にによって悪に犯すこともあるが、自分が関係する集団や環境によって、心ならずも悪に引きずり込まれてしまうこともある。何らかのやましさを抱えることなく生きていける人は極めてまれだ。私たちの多くは自分の犯した罪のやましさを、おさえつけ、ごまかし、正当化しながら生きている。
組織的な動きに取り込まれず、「正しさ」を貫く検察ファン・シモクと警察のハン・ヨジンの二人の主人公は、正しく生きることが難しい、そしてやましさとつきあいながら生きていかねばならないわれわれの願望が具現化されたヒーローだ。

最終話で、正しさを貫いたばかりに、組織内で孤立してしまうハン・ヨジンを演じるペ・ドゥナの演技は胸に迫る。