閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

『子猫をお願い』(2001)

  • 監督:チョン・ジェウン
  • 脚本:チョン・ジェウン、パク・チソン
  • 製作 オ・ギミン
  • 出演者:ペ・ドゥナ、イ・ヨウォン、オク・チヨン、イ・ウンシル、イ・ウンジュ
  • 映画館:早稲田松竹
  • 評価:☆☆☆☆☆

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A post shared by 片山 幹生 (@katayama_mikio)

二十年前の映画で、二十歳のペ・ドゥナを見ることができる。韓国公開は2001年で、日本公開は2004年だとWikipediaにあった。私がペ・ドゥナを知ったきっかけは確か2005年に公開された山下淳弘監督の『リンダリンダリンダ』だった。『リンダリンダリンダ』でペ・ドゥナに魅了された私は、たぶんその直後ぐらいに立て続けにペ・ドゥナ出演の映画作品をレンタルし、そのなかにこの作品があった。

早稲田松竹での上映で今回15年ぶりぐらいで『子猫をお願い』を見た。ディテイルは記憶から抜けていたが、物語の骨格ととてもいい作品だったという印象は頭に残っていた。思っていた以上の大傑作だった。

仲良しの女子高生5人組が卒業して、それぞれの道を歩み始める。商業高校出身の彼女たちはいずれも裕福な階層ではない。なかでも両親を亡くし、祖父母と繰らすジヨンはスラム街のバラックに住み、その境遇故に職にも恵まれない極貧の状態にあった。

裕福ではない階層の韓国の若い女性たちが抱える閉塞感の状況を丁寧に描いた作品だ。
その息苦しい状況に押しつぶされそうになりながら、5人の女性は、途切れそうな連帯のなかでそれぞれの生活の困難と向き合って生きていく。彼女たちの家を渡り歩くことになるか弱い子猫は、彼女たちの希望の象徴だ。

女優ペ・ドゥナの魅力の本質的部分が二十年前から今まで変わっていないことを確認できた。『子猫をお願い』ではつらい状況のなかで崩れ落ちてしまわないよう、ペ・ドゥナが演じるテヒはぐっと唇を噛みしめ、気を張っているように見える。

明日の見えない、出口なしの状態のなかで苦しんでいる若者すべてに見て欲しい映画作品だ。作品の彼女たちの姿はそうした苦しみのなかにいる人たちの励ましとなるだろう。