閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

喜劇「人類館」

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 沖縄、アイヌなど様々な少数民族の人間を展示したことで問題になった1903年の人類館事件をモチーフとした作品。

2021年2月13日、14日に沖縄のさわふじ未来ホールで上演予定だったが、緊急事態宣言発令のため無観客上演となった。16日から21日まで期間限定でwebで舞台上演映像が無料公開されているのを視聴した。

 1978年に作者の知念正真はこの作品で岸田戯曲賞を受賞している。人類館事件を核に、3人のキャストによって大和人の暴力に蹂躙された沖縄の現代史の場面がコラージュ的に描き出される。人類館で展示される沖縄人、太平洋戦争の沖縄戦、戦後のアメリカ占領時代の場面が、シームレスに次々と展開する。

 非常によくできた風刺劇であり、悲壮な現代史の記憶を劇的な手段によって再現することで、沖縄民族としての歴史を俯瞰する視点や、自虐的で皮肉な笑いによってそれを乗り越えようとする強さがある。変則的なダブルキャストだが、俳優の演技も非常にすぐれたものだ。沖縄が日本において実体のある一つのnationであり、演劇に限らず、沖縄のあらゆる文化/芸術表現がnationalismを帯びざる得ない理由について考えながら見た。そしてある種の「オリエンタリズム」的視点を通して、沖縄文化に親近感を抱き、愛好する私自身の態度についても。

 月並みすぎる感想ではあるけれど、大和人が沖縄人に対しては理不尽な加害者であった歴史と現実は、常に頭のどこかに置いていなければならないと思った。