【告知その1】
10月は2ステージです!
その1は #埋設演劇「ヴェネツィアの死」
10/13(日)12:00現地集合
高幡不動万願寺歩道橋左岸側(https://t.co/AxlQrva0qT)1000円+投げ銭(賄い付き)
— 平原演劇祭 公式 (@heigenfes) 2024年9月16日
出演:
青木祥子
小林敬(劇団小林組)
星ヒナコ
試し掘りレポートはこちら⇨ https://t.co/XQl7JjiPc6 pic.twitter.com/o5b0WXmsC4
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この埋没演劇は9月1日(日)に上演される予定だったが、台風の接近により、10月13日(日)に延期されたものだ。実際には9月1日の午後、台風の速度は遅く、上演会場の浅川周辺は曇りだったが、公演は中止となった。ただし、出演者と観客有志で穴掘りの予行練習のみが行われた。その報告は以下のリンクにある。
13日、出演予定の青木祥子は体調不良のため欠席。彼女が出演する予定だった別役実の『いかけしごむ』は、小林敬が急遽一人で上演することになった。
京王線・高幡不動駅の改札で出演者が出迎えるという告知が当日Twitterで流れていた。しかし、改札付近にはそれらしい気配はなかった。探していると、モノレール駅から来たぼのぼのさんが声をかけてくれた。二人で駅周辺を捜索したところ、駅構内のキオスクでサングラスをかけた小林敬を発見した。彼は我々を見てニヤニヤしていた。もう一人の出演者、星ヒナコはモノレール駅の改札と勘違いし、集合時間に10分遅れて到着した。
この日の観客は私とぼのぼのさん、そしてすでに会場で待っていたmelさんの3名であった。河原では15人ほどの団体がバーベキューを楽しんでいた。その横で、我々は小林敬を生き埋めにするための穴を掘り始めた。埋設演劇である以上、出演者は埋まらなければならない。本来なら青木も一緒に埋められる予定だったが、体調不良のため小林一人が埋まることになった。
人を埋める穴を掘るのはかなりの重労働であると聞くが、確かに実際やってみると土が思ったより重くて大変だった。柔らかい河原の土でも3~4人で掘るのは一苦労だった。
出演者の星ヒナコの友人3名が見に来るはずなのだが、12時集合を午後2時集合と勘違いしてしまったと言う。穴を掘ったり、観劇まかないのおにぎり飯を食べているうちに13時を過ぎていたので、その3人の観客の到着を待ってから開演することになる。まかない飯のおにぎりの具はいくらと燻製したいぶりたくわんで、塩味の加減が絶妙で美味しかった。平原演劇祭の飯はいつも美味しい。埋設される小林敬はおにぎりは食べずに穴の横に佇んでいた。
「おにぎり、美味しいですよ。食べないんですか?」と聞くと、終演後に食べるという。やはり演劇とはいえ埋設されるため、ナーバスになっていたのだろうか。
14時前、星ヒナコの友人3名が到着。全員、美術大学の学生だった。予定より2時間遅れで公演が始まった。
今回の公演はジョジョ劇+小林敬による別役実劇だった。小林は河原に埋められて準備完了。「ヴェニツィアの死」は、ジョジョの第6部らしい。私は原作は読んでいない。これまで人見知りしていたような感じでおとなしかった星が、芝居がはじまったとたん人格が豹変して、激しいテンションでジョジョ劇を演じ始めた。
ギアッチョ : フランスのパリってよぉ、英語ではパリスって言うんだが、みんなはフランス語通りパリって呼ぶ。でもヴェネツィアはみんなベニスって英語で呼ぶんだよぉ。ベニスの商人とかベニスに死すとかよぉ〜。
なんでッ!?ヴェネツィアに死すってタイトルじゃあ ねぇんだよぉお!!ナメてんのかぁ!?イタリア語で呼べイタリア語でッ!!チクショオーッ!!ムカつくんじゃ!!コケにしやがってぇ!ボケがッ!!
ジョジョ劇と別役実劇のつながりはまったくわからない。はじめ数分間、星がフルスロットルで台詞をがなりたてたあと、その激しさとは対照的なのっそりとしたかんじで、地面に埋まった小林敬の芝居が始まった。地面埋設の人物は、そういえばベケットの『しあわせな日々』がそうだった。別役を通じて、ベケットへのオマージュでもあるのだろうか。埋まることはあらかじめ決まっていたが、別役の『いかけしごむ』を選択したのは演者である小林であるように思った。本来ならこの芝居は青木と小林の二人芝居になるはずだった。しかし青木の急病のため、小林は急遽、これを一晩で一人芝居に組み直したと言う。
私は上演された芝居が、別役実の「イカケシゴム」という作品であることは、上演終了後に小林から聞いて知ったのだが、上演中は平原演劇祭らしからぬ、きっちりと組み立てられた芝居だなと思ってみていた。だいたい平原演劇祭は特異な上演環境に気を取られてしまって、台詞に対する注意が散漫になり、ゆるゆるのおじやみたいな芝居に飲み込まれてしまうことが多いのだ。それが小林敬の芝居は、観客への即興的な呼びかけを取り入れながら、台詞をちゃんと聞かせ、戯曲の面白さを観客に伝えようとしていた。一人芝居としてうまくアレンジされていて、違和感はなかった。
小林の埋設芝居の最後には大型のMONO消しゴムが大量にばらまかれるという演出があった。小林は、平原演劇祭の野外での埋設という設定を最大限生かせるような演目と演出を考えたのだろう。特異な上演状況を生かして、結果的に戯曲の内容、雰囲気に適合した上演を行っていたことに感嘆する。これで彼が主宰する劇団小林組の公演への好奇心もそそられた。
小林敬の一人芝居「イカケシゴム」が終わると、再び星ヒナコが登場し、ジョジョ劇「ヴェネツィアの死」の後編がはじまる。小林は穴から出て、ジョジョ劇の登場人物となった。
カオスとエネルギーに満ちたハイテンションでの激しい銃撃戦が行われ、何がなんやらわからない。上演時間はトータルで1時間ほどだった。