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夏休み子供向きアニメ作品で河童もの、とある平凡な家庭に異生物がやってきてその家の子供と友達になる、といった設定はありふれたものであるし、映像的にも最近のアニメ作品の中では突出した表現や個性があるわけでもない。どちらかというと地味な作品だが、21世紀の日本アニメを代表する傑作だと思った。
とにかく脚本に非常によく練られている。驚異的なほど自然なダイアローグによって、登場人物の個性が、その年代特有の思考法のずるさや未熟さも含め、リアルに表現されている。河童をめぐる人物の反応にはいずれも極めて自然で違和感がない。
日常に入り込んだ河童という異物を通して明らかになるのは、われわれ大衆社会のあさましさ、マスコミの問題、自然・故郷への憧憬、そして少年・少女だった頃の我々の純粋さと未熟さ、およびそのかけがえのなさである。この作品ではこうしたメッセージが、抑制されたバランス感覚に満ちた表現によって、静かに提示される。
主人公は少年であるけれども、実は大人向きの作品であるようにも思える。僕は見ていて後半は涙がずっと止まらなかった。