閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

足立倫行『錦の休日:長期休暇に挑んだ課長たち』(新潮文庫,平成6年)
ISBN:4101022151
株式会社オムロン(旧立石電機)で昭和63年(1988年)に導入された長期リフレッシュ休暇についてのドキュメンタリー.この休暇をどのように課長たちが利用したかをレポートしている.

足立倫行は目下一番気に入っているドキュメンタリー作家である.最初に読んだ彼のルポルタージュは,作者と同郷の鳥取県出身の作家水木しげるについてのもの.この水木しげるについてのルポルタージュをのぞき,足立倫行の選ぶテーマはいかにも地味なものが多い.今回読んだのは企業のリフレッシュ休暇についてのもの,他に新潮文庫に入っているのは,対馬から北海道までイカ釣り漁船に同情して日本のイカ事情を追う『日本海のイカ』,大病院のさまざまなセクションで働く人を取材した『北里大学病院24時』.
彼の文章は,佐野慎一のようなわざとらしいアクの強さはない.淡々と先入見をできるだけ配した客観的な描写である.ただ対象に対する観察は実に丁寧で粘り強い.一見平凡で見過ごされがちな日常の奥にある面白さを誠実に引き出してくれるのが,足立のルポルタージュの醍醐味である.