閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ビッグ・フィッシュ

http://www.big-fish.jp/contents.html

2004/05/15公開
製作年 : 2003年
製作国 : アメリカ
監督 : ティム・バートン
脚色 : ジョン・オーガスト
原作 : ダニエル・ウォレス
出演 :
ユアン・マクレガー
アルバート・フィニー
ビリー・クラダップ
ジェシカ・ラング

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新宿文化シネマ
評価:☆☆☆☆

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カルト色のある題材と映像で,メジャーな監督にもかかわらずある種のマニア受けもするティム・バートンの映画はこれまで『マーズ・アタック』しか観たことがなかった.完全な娯楽作品であったにもかかわらず,話のテンポの悪さとキッチュで薄っぺらい映像感覚に拒否反応を示してしまった.
それでもその後『エド・ウッド』が話題になったときは,その素材選択のセンスのよさでだいぶ気になったのだ.結局見に行かなかったのだけど.

今回はほら話ばかりする親父を息子が追いかけていくストーリーと聞いてやはり気になる作品だったが,評価が人によってあまりに極端に二分するのと,『マーズ・アタック』での編集のテンポの悪さの印象が強く,なかなか足が向かなかった.

結果的には,やはりほら話が大好きな僕好みの作品で,しかも涙がとまらないほど感動した作品だった.ここまで涙腺を刺激する映画は久しぶりだ.
親父が語る幻想的なほら話の一つ一つが美しく丁寧に映像化されているし,そのほら話でのエピソードが見事に後半の物語の伏線になっている.
妻との出会いと求愛のイメージの再現.
巨人との二人旅.森を抜けた場所にある信じられないほど美しい小さな街.伝説的な巨大な魚.戦争中の武勇とシャム双生児の歌手の亡命.

主人公の老人とその妻の慈しみの深さと静けさのシーン.
風呂桶で抱き合う二人.

僕は自分の妻とこういった具合に心を通わせたことはないなぁと思い,寂しさを覚える.ぼくのほら話は彼女の神経を逆なですることがほとんどだ.いつか深いところで理解し会えるときが来るのだろうか.

映画の最後のシーン,父親がいままで語らなかった自分自身の死のシーンを,父親のほらを憎んでさえいた息子が語り継ぐシーンのせつなさと美しさ.

しびれるような陶酔感ともなう感動をあたえてくれた傑作だった.